特集
Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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職業的レリバンスで卒業生の能力を担保

 従来の経営資源のみでデザインされる教育によって他大学との差別化を図ることの限界は、多くの大学が痛感していると考えられる。一方で、例えば経済学という伝統的な学問分野でも、それが社会でどう活用されるかを具体的に、鮮明に感じながら学べる「新しい経済学」を生み出す余地は十分あるのではないか。学内の論理を前提にした従来の産学協同とは異なるオープンな議論と外部の人材の活用が、職業的、社会的レリバンスを明示した特色ある教育プログラムの開発と、卒業生の能力の担保につながるはずだ。
 地域、産業界に対して大学の扉を常に開け放ち、さまざまな情報を共有することによって、社会の課題の解決につながる教育プログラムを開発できるだろう。学生支援、地域貢献においても、外部の知恵をコーディネートして施策を考え、その成果を地域、産業界に還元するという新しい大学像を提案したい。地域、産業界にとっても課題解決につながる魅力的なしくみをつくることができれば、積極的な協力が得られるはずだ。
 産業界の課題の把握という点では、5ページのデータが手掛かりになるだろう。企業では、学生の能力評価について「評価基準が人によってバラバラ」「能力をきちんと測定する方法がない」といった問題意識が、いずれも3割前後の採用担当者にある。標準化された能力検査については、図表に示すような問題・課題が認識されている。アウトカム評価を求められている大学と、少なくともこれら3割の企業は、学生が身に付けた能力を測定・評価する方法の開発という共通の課題を抱えており、協力・協同の可能性がありそうだ。

能力検査の課題・問題点(複数回答、%)

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