特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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現状1

高校教員・保護者が
教育情報の公開に求めるもの


ベネッセ教育研究開発センターが実施した3つの調査の結果から、大学による情報公開の現状と、大学の情報に対する高校教員・保護者の意識を紹介する。
それらを通して、戦略的に情報を公表するために、大学が把握しておくべき「情報の受け手」のニーズを探る。

情報公開の状況
DP、CP、学習成果は多くが公開を予定

 大学による情報公開は、どの程度進んでいるのだろうか。現在、ウェブサイトでどのような情報を公開しているのか、また公開予定があるのかを、全国の4年制大学の学部長に聞いた結果が、図表1である。

※図をクリックすると拡大します。 図表1:大学の情報公開の状況

 公開が最も進んでいる情報は、「教員組織や施設・設備等の情報」「各学部の定員数情報」で、それぞれ8割の大学が公開している。「シラバス等の教育内容・方法」「年度ごとの志願者数、合格者数、入学者数の情報」も7割近くの大学が公開済みで、基本情報の公開は進んでいるといえる。
 「現在公開している」と答えた大学を設置者別でみると、国公立大学は全体より高い値を示した項目が多い。国立大学の法人化に加え、公立大学も多くが法人化。「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」の第22条に規定された「情報提供」の適用によって、組織・業務・財務・評価および監査に関する情報の開示が進んだと考えられる。
 ただし、「財務情報」は、「現在公開している」「今後新たに公開を予定または検討する」という大学が全体で7割を占める中、公立大学の公開状況は4割と半数を下回り、「今後新たに公開する予定もない」が3割を占めている。自治体の財政が悪化する中での税金の使途にかかわる情報であり、より積極的な公開が期待される。
 現在、公開している大学は少ないが、「今後新たに公開を予定または検討する」と答えた大学が多かった項目には、「ディプロマ・ポリシー」(54.8%)、「カリキュラム・ポリシー」(47.0%)、「学生の学習成果に関する情報」(43.7%)が挙げられる。大学は学生にどのような力を身に付けさせようとしているのか、学生は4年間の学習によってどのような力を身に付けたのか。学士課程教育の目標、教育の質と成果についての情報を公開する動きが見て取れる。2008年12月に中央教育審議会から答申された「学士課程教育の構築に向けて」の趣旨に照らしていえば、今後、大学の教育内容・成果は、学生、保護者や企業に対して、積極的に公表されるべき最も重要な情報である。大学もそのことを認識し、公表に向けて動いていると推測できる。
 一方、現在公開が進んでいないにもかかわらず、「今後新たに公開する予定もない」と答えた大学が多かった項目は、「退学者数・休学者数に関する情報」「設置計画履行状況報告書の内容」である。
 なお、いずれの項目も「無回答」が10〜20%ある。これは、回答者の学部長が「大学での状況」を把握していなかったためと推測される。


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