特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 15/45 前ページ 次ページ

まとめ
公表形式の全学統一、探しやすい工夫が必要

 はじめに述べたとおり、就職情報について高校教員や保護者の関心は高い。なるべく詳しく就職先について知りたいという要望に対し、大学は十分に応えられていないようだ。就職情報の大本は、卒業生からの進路報告である。卒業生一人ひとりの進路をきちんと把握する体制を整え、実態を正確に伝えるように努めるべきだろう。
 調査では、就職情報が掲載されたページにたどり着くのに苦労した大学もある。高校教員、保護者が見つけやすいよう、トップページからすぐにたどれるようにすべきである。また、全学で公表する内容を決め、就職率の算出方法、情報の集計時点なども統一する必要がある。学部別、学科別など、学問ごとの適切な単位でまとめて公表すれば、教育の特色を裏付ける情報となるはずだ。
 現状1で紹介した調査結果から推測すると、高校教員や保護者が就職情報に関心の高い理由は、学生が大学4年間の学びでどのような力を付け、それが社会でどのように評価されるのかに関心があるからだろう。卒業生調査による仕事における大学教育の役立ち度、企業調査による卒業生への評価についても、情報としてのニーズが高いと考えられる。

強み・特色を伝える情報発信に期待

(社)関西経済同友会事務局 野畑健氏


 関西経済同友会の大学改革委員会は2009年に、地元の大学のウェブサイトにおける情報公表度について調査した。「大学のポリシー」「学生の受け入れ実態」「教育の成果」などの5項目を設定。「教育の成果」は就職等の実績に関する情報で、「主な進路・就職先が企業名や学校名として明示されているか」「採用人数も記載しているか」など、5つの観点でチェックしたが、すべてクリアした大学は極めて少なかった。他の4項目も公表が進んでいるとはいえなかった。
Between編集部の調査結果から、全国的に見ても大学の情報公表は遅れていると感じる。
 私たちの調査は、すべての大学があらゆる機能を持とうと欲張る「ミニ東大化」の状況にあり、大学の特色がわからなくなっているという問題意識が出発点である。大学は、それぞれの強みや特色をきちんと発信しているのか、確認したかった。
 「大学のポリシー」という項目では、人材育成像を明示しているか調べた。企業は、自社の求める人材像に合致する教育を行っている大学はどこか知りたいが、人材像をわかりやすく具体的に示している大学は少ない。これが、採用におけるミスマッチの一因になっているのではないか。就職実績の情報も、大学の掲げる人材育成像がどの程度実現されているか知るうえで重要だ。
 これらの情報は、入試難易度ではなく教育の特色を重視して大学を選ぼうとする受験生からも求められているはずで、大学は積極的な公表に努めてほしい。


  PAGE 15/45 前ページ 次ページ
目次へもどる
大学・短大向けトップへ