特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 24/45 前ページ  次ページ

市場にもわかりやすい評価結果作成が課題

 大学を最終的に評価するのは、市場(志願者、学生を採用する企業など)であるという考えがある。しかし、市場側は大学の情報を必ずしも有していない。すなわち、情報の非対称性が存在する。故に、市場メカニズムが機能しない。また、大学が情報を公表しても、市場が十分理解できるとも限らない。そこで、市場の判断を助けるために評価機関の評価結果が適切に公表される必要がある。
 大学は2011年度から教育情報を公表することになるが、退学率などの数値データが公表されれば、おそらくそれを横並びに比較して大学の良しあしを語るマスメディアが登場するだろう。市場メカニズムを機能させるためには、数値の持つ意味も含めて情報が社会に正確に伝えられなければならない。
 工学系の某大学は、受験生向けの冊子に全学部・学科の退学率を掲載したが、ある学科の退学率が目立って高かった。そのことについて、2010年秋、ある新聞は取材で得た情報をふまえ次のように紹介した。その学科では、社会に通用する技術者を養成するためには、教育上、手抜きはできないとして、毎週の課題やレポートなどの指導、さらには社会人としてのマナー指導が厳しくなる。その結果、留年率が高くなり、留年が重なれば退学するという事態につながる。しかし、その学科の卒業生の就職先における評判はすこぶる高いという。
 一方、同時期にこんなケースもあった。ある雑誌に私立大学の財務状況のワーストランキングが掲載された。ランク付けにあたり2009年度まで認証評価を受けていない大学をマイナス1点とする同誌独自の評価指標を設定していた。認証評価は法令上7年以内ごとに受ければよいことになっている。認証評価第一サイクルの最終年度に受けることは、認証評価から逃げて追い込まれた状態を表すわけではない。例えば、学部改組の結果を検証するために認証評価の時期を遅らせるという大学も存在するのである。裏にある大学の実情を理解しないまま公表された情報・数値が短絡的に読まれていくことに、強い危惧を覚える。
 2011年度からの教育情報公表にあたり、市場側は、その数値の裏に大学のどのような取り組みが存在するのかも理解する必要がある。そのために、大学が公表する教育情報と併せて、自己点検・評価結果や認証評価結果等も見ていくことが必要であろう。他方、認証評価機関にとっては、市場の判断が十全に行われるよう、当該大学関係者以外の者が読んでもわかりやすい評価結果をつくり上げることが課題となってくる。


  PAGE 24/45 前ページ  次ページ
目次へもどる
大学・短大向けトップへ