特集
Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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行政の意向ではなく利用者への配慮が必要

 大学サイトにおける情報公開の手法は「ファクトブック型」と「PDF冊子型」が主流になりつつある。
 ファクトブック型とは、「データ(または数字)でみる○○大学」といったページを指す。単に数字データを羅列するだけでなく、各大学独自の視点で定量データを図解したり、説明文を加えたりするなどして、大学の特徴をわかりやすく伝えているものである。ただし、情報量のばらつきが大きすぎて、大学間の比較は難しい。
 一方、PDF冊子型は、大学案内などをPDF形式で掲載しているものだ。印刷に適しており、大学側の負荷も大きくないと思われる。ただし、表示の遅さや情報の探しづらさなどの問題が生じている。目次からリンクさせたり、しおり機能を活用するなど、目的の情報に到達しやすくする工夫が必要である。
 公表の義務化には、高校生や保護者の視点・ニーズに基づいて対応すべきだ。ところが大学の広報担当者は、文部科学省がどう考えるかに意識が行きがちではないか。
 同じようなことは、2008年の金融商品取引法の成立時にも発生した。投資家保護のための法整備にもかかわらず、銀行や証券会社は「ウェブサイトにこのように載せたら行政側はどう考えるか」に意識が行き過ぎ、金融庁に事細かに質問を投げ掛けた。行政側が「法の趣旨に則って判断してほしい」と諭したという。各大学は、義務化の趣旨に則って主体的に判断する必要がある。各大学の対応にばらつきが出てしまい、結果として利用者にとって情報がわかりづらくなってしまうようであれば、韓国のように強力なトップダウンでフォーマットを統一することもあり得るかもしれない。
 高校生や保護者が求めている情報は何か、公的な教育機関として公にすべき情報は何かという2つの視点から、今回の制度化を捉え、今後の広報活動に反映してもらいたい。


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