特集
Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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社会的責任の遂行にとどめない情報公表

 単に「情報を集めて外部に開示しなければいけない」という発想で取り組む情報公表の先には、「大変だったが、とにかく社会的責任を果たした」という最小限の成果しか待っていない。それは、情報公表という新しい大学間競争における「負け」を意味しないだろうか。特色ある教育を自学の強みとして伝えるという戦略性を持ち、「新たな顧客を掘り起こす」「十分な理解を促して入学後の愛着・定着につなげる」という最大の成果をめざすべきだ。
 こうした考え方に立てば、各大学が向き合うべきは文科省ではなく、あくまでも受験生ということになる。法令を守ることの重要性はいうまでもないが、そのために情報を公表するわけではないはずだ。受験生一人ひとりが、人生の重要な分岐点で自分にとって最善の選択ができるようにし、それが結果として自学にも良い結果をもたらす、そのような情報公表をめざすべきだろう。
 例えば、文科省が9項目から切り離して努力義務とした「学生が修得すべき知識・能力」の公表も、受験生の側を向いてどう扱うか考える必要がある。一方で、義務、努力義務のいずれにも位置付けられていない「教育に対する卒業生の評価」「卒業生に対する企業等の評価」等は、教育内容について受験生の理解を助けるうえで、不可欠な情報だという判断もあり得よう。


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