大学ブランディング成功への道
小出正三

ブランディングコンサルタント

小出正三

こいで・しょうぞう◎1987年、国際基督教大学教養学部卒業。(株)大広、(株)マッキャンエリクソン勤務などを経て、2000年にブランドマネジメント専門のコンサルティング会社・ブランドロジスティクス(有)を設立。トップ企業から新進ドットコム企業、公共団体まで、幅広い顧客のブランド開発に携わる。


Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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大学ブランディング成功への道 - 企業の発想・手法を超えて

[最終回]

4.

トーン&マナーの一元管理で
小ブランド群と大学名をつなげよう

関心に基づく小さなブランドを数多くつくっても、それらを大学名と結びつけて認知させるのが難しい。多くの大学のこうした悩みに対し、コミュニケーションの出口での一元管理を提案したい。

チャート図

アンブレラ型からプラットホーム型に移行

 大学が従来行ってきたブランディングの多くは、一般に「アンブレラ型」と呼ばれるものである。大学名で全ての活動をカバーし(個々の活動は、「○○学部」「××大学オープンキャンパス」などの一般名詞で呼称)、その大きなブランドによって「認知と信頼」を獲得しようというものである。このようなブランディングは1980年代頃までは企業の間でも主流の手法であった。
 しかし1990年代以降、多くの企業は「プラットホーム型」のブランディングに移行している。プラットホーム型では、企業名(企業ブランド)を品質保証的な機能に限定する。代わって顧客の「関心」を喚起するための小さな、しかしそのポジショニングがはっきりしたブランド群を導入することで、全体的なブランドフォーメーションを提示するのである。ソニーを例に、2つの違いを表すと下図のようになる。企業は顧客の具体的な関心に基づく小さなブランド群を機動的に操り、時代や顧客ニーズの変化と多様性に素早く対応した価値創造とコミュニケーションを行っているのである。

ブランディングにおけるアンブレラ型とプラットホーム型

 関心に基づく小さなブランド群でフォーメーションを形成するブランディングは、少子化の中で激しい競争にさらされる大学にとっても必要な戦略であると考えられる。単に大学名を植えつけるのではなく、独自性のある各種活動を個性的なネーミングでブランド化することによって、その活動が一時的なものでなく長期的・戦略的な取り組みだと印象付け、顧客の関心に応えていくのだ。
 「渋谷学」のような研究の独自性、あるいは「SFC」のようなキャンパスの独自性、またはユニークな学生支援や卒業生組織など、ブランド化できる対象はいくつもあるはずだ。このような各種活動のブランド化を促すことが、大学全体の活性化につながる起爆剤にもなる。
 そのような考え方を再確認したうえで、今回は「関心に基づく小ブランド群をいかに大学名という大きなブランドに統合するか」という実際的な問題を考えたい。つまり、「渋谷学」から國學院大學を、「SFC」から慶應義塾大学を、直ちに思い浮かべるようなブランドの認知をどう広げるかという問題である。
 私自身、大学の関係者から「小さなブランド群をどのようにして大学ブランドに統合できるのか」「大学のブランドマネジメントをどのように組織化したらよいか」という課題について聞かれることが多い。実はこの2つはコインの裏表で、一方の解決がもう一方の解決につながる。


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