特別企画

文部科学省高等教育局専門教育課企画官

神田忠雄

かんだ・ただお 1993年、科学技術庁入庁。原子力局政策課企画係長、文部科学省研究開発局地球観測国際戦略策定準備室室長補佐、外務省在中華人民共和国日本国大使館一等書記官、経済産業省原子力安全・保安院統括安全審査官を経て現職。


Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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特別企画

社会から求められる就業力の育成

厳しい雇用情勢の中、学生の社会的・職業的自立につながる「就業力」の育成が注目されている。
大学が育成すべき就業力とはどのようなものか、そのために大学がなすべきことは何か。
文部科学省の担当者による講演と、「大学生の就業力育成支援事業」選定校の分析から探る。

文部科学省担当者による講演

学生の就業力育成に向けて
全学的な改革を行う大学を支援


文部科学省高等教育局専門教育課企画官  神田忠雄

すれ違う学生の志望と企業の求人

 近年、大学新卒者の雇用環境が厳しさを増している。2010年4月時点での大学新卒者の就職率は91.8%(前年同期比3.9ポイント減)で、ここ十数年で最低だった2000年に次いで低い結果となった。これは就職希望者に対する就職者の割合であり、全卒業者に対する就職者の割合は60.8%(7.6ポイント減)と、さらに厳しい数字だ。就職も進学もしていない者の割合は21.7%(5.7ポイント増)で、2割の学生が進路未定のまま卒業した。
 一方、求人倍率は、民間企業の調査によると、2010年の1.62倍に対して2011年は1.28倍。求人総数は72.5万人から58.2万人へ19.8%の減少となるが、就職希望者数は44.7万人から45.6万人と1.9%増え、厳しい状況が見込まれている。
 こうした情勢に加え、学生の志望と企業の求人とのすれ違いも見られる。同じ民間企業の調査によると、従業員5000人以上の企業の求人倍率0.47倍に対し、従業員300人未満の求人倍率は4.41倍と高い。学生の漠然とした大企業志向が就職をいっそう難しくしている実情がうかがえる。
 職種別にみても、学生の志望と企業の求人とにずれがある。厚生労働省の調査によると、2010年2月時点で、サービス、運輸・通信、専門・技術の職種が不足している半面、事務職や単純工は過剰であった。長期的に見ても専門・技術職は不足傾向にある。
 このような実情をふまえ、文部科学省は、キャリアカウンセラーを約250大学に配置し、就職支援体制を強化してきた。さらに、緊急経済対策として配置校を約500大学に倍増し、カウンセリングを強化してミスマッチ解消に努めていく。

*厚生労働省「労働経済動向調査(平成22年11月)結果の概要」では、次のように職種を説明している(編集部要約)。サービス:個人に対するサービスの仕事に従事する者。運輸・通信:運転、操作に従事する者、電話交換手など。専門・技術:高度の専門的知識を応用し、技術的な業務、研究等に従事する者。事務:管理職の指導、監督を受けて事務に従事する者。単純工:簡単な作業、単純な筋肉労働に従事する者。

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