VIEW21 2000.9  特集 危ぶまれる生徒の学力

▲目次に戻る

★学習時間と意欲から見る「学力低下」★
自宅での学習時間が減少し学習への意欲も持てない


 次に、「学力低下」の大きな直接的要因の一つと思われる学習時間と意欲に関して見ていきたい。

年々自宅での学習時間が減少

 図4は、ある高校の1年次春における自宅学習時間の調査結果である。高校1年であれば、3時間くらいは勉強してほしいというのが教師の願いであろう。しかし、'98年以降、この高校では3時間未満が7割を越え、中でも2時間未満の割合が増加傾向にある。さらに2年次春になると、中だるみの時期ということもあってか、3時間以上勉強している生徒はぐっと減り、その分勉強時間が2時間未満の生徒が増えている。ちなみに、この高校は学区内ではトップの進学実績を残している。

図4 1年次春における自宅学習時間の変化

図5 高校1年の平日の学習時間 図5を見ても分かるように、生徒の学習時間の減少はこの高校に限ったことではなく、全国的な傾向と言える。学習時間は、学力形成の度合いを左右する基本的な指標の一つである。それを考慮すれば、学習時間の減少は「学力低下」につながっていると考えられる。

宿題の量は減少し、30分以内で終わるものに

 中学の教師にアンケートを採ったところ、宿題の量が数年前より減ったと答えた割合は、32.6%に上った。反対に増えていると答えたのは9.1%。その量は、ほとんどが30分以内で終わるものだと言う。その内容は復習的な内容が多いと答えた教師が70.9%いる。授業中に問題や副教材を使う時間が減っていると答えた教師が44.4%だったことを考えても、授業の内容を定着させるのは、授業外ということになる。しかし、宿題の量が減っている状況から見て、授業で勉強した内容が十分定着できているのかは疑問が残る。



図6 高校1年の読書について 読書時間の減少は多方面に影響

 テレビやゲームなど、多くの娯楽に囲まれて育った今の生徒たちは、年々読書をしなくなっている(図6)。文章を読むことに慣れていないマイナス面は、問題文の理解に時間がかかるなど、単に国語だけの問題にとどまらない。また、読書から得られるものは、新たな知識を得られるだけでなく、興味・関心を育てるなど決して小さくない。



表2 学力向上のための要件の変化 学びへの意欲が年々減少

 表2を見ると、学力を向上させるために必要なものとして、生徒が「生まれつきの能力」「運」と答える割合が増加している。それに比べて、「努力」「人に負けたくない」「授業をしっかり」の割合は減少している。つまり、自分の努力次第で学力を向上させられると考える割合が減っているのだ。今の生徒は、勉強への意欲を失いがちであるようだ。それを取り戻させるには、将来の夢など明確な目標を持たせることが重要になってくる。




<前ページへ  次ページへ>

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。