VIEW21 2000.9  特集 危ぶまれる生徒の学力

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急激に増加した1年生の家庭学習時間

 今年度の春の生活実態調査は5月23日から29日にかけて行われた。1年生の1日当たりの平均学習時間は200分。これは前年度の1年生の学習時間を50分以上も上回る数値だ。ただし、同校の場合、今年度の新入生から定員減に伴い1クラス減となっている。多様な学力層を抱え込んでいた前年度の学年までと比べて、入学してくる生徒の層がより上位の方に絞られたとも言える。その点は差し引いて考えなければならない。しかしそれにしても、ガイダンスの効果は大きかったと言えるだろう。
 教師の評価も上々だ。
 「昨年まではノートの取り方が分からなくて1時間ボーッとしている生徒がクラスに2、3人いたのですが、今年は皆無です。予習も真面目にやってきている生徒が多いですね」(藤原先生)
 「私は、学年全体の学力を把握するとき、平均点の半分以下の生徒が何人いるかという視点から校内テストの成績を見るのですが、昨年までは半分以下の生徒がかなりいました。しかし今年はわずか数人。どの生徒からも、授業を真剣に受けようという雰囲気が感じられます」(宇佐美先生)
 高1の段階で急に高度になった授業に戸惑い、つまずく生徒は少なくない。彼らがスムーズに高校での学習に入っていくためにも、清水東高校のような入学段階での学習指導は今後重要性を益々高めていくだろう。

学力向上のためのその他の取り組み
一斉テスト
同校では中間・期末テスト以外にも一斉テストを実施している(国語は各学期1回ずつ。数学は1、2学期それぞれ2回ずつ、3学期1回。英語は1学期1回、2学期2回、3学期1回)。一斉テストは定期テストと同じく授業範囲から問題が出される(国語は副教材から出題)。こまめにテストを実施することは、生徒が日頃の授業を大切にし、学習習慣を身に付けることができるという点で効果的だ。
65分授業
'63(昭和38)年度から65分授業を実施。65分授業のメリットを数学科の足立先生は次のように語る。「数学では、生徒を指名して課題の解答を黒板に書かせる機会を多く持たせています。教師からの一方通行の授業ではなく、生徒が手を動かす演習形式のスタイルを採っているんです。これも65分授業だからできることです」
作文指導
1年生を対象とした夏休みの課題として、岩波ブックレットを1冊読んで要約し、自分の意見をレポートとしてまとめること、新聞の切り抜きノートを作り、記事の要約と意見を書くことを課した。これとは別に1、2年生対象の読書感想文の宿題もある。その他にも、文章力を身に付けさせると同時に、幅広い分野への関心を育てるため、全クラスに朝刊1紙を配布して生徒に読ませている。

高校現場は学力低下にどう対応すべきか?

 漠然と「生徒の学力が低下しているのでは?」と感じていても、実際そうなのか確信を得づらいと感じる教師は多い。各校で学習時間や各分野の知識の定着度を測りデータを蓄積していけば、「過去に比べてこの分野の学力が落ちている」と、教師間での問題意識の共有化を図りやすく、全体で対策を講じやすいだろう。例えば、学習時間が減少しているという結果が出たならば、学習習慣を身に付けさせるための予習・復習の仕方の徹底など、生徒の自宅学習を充実させる取り組みが有効だ。また同時に、生徒の学習意欲を育てるために、将来の目標を見つけさせることが必要になってくるだろう。職業研究や学部・学科研究など、実体験を伴うような取り組みを行いたい。


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