VIEW21 2000.10  特集 SIづくりから始まる学校改革

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写真 小池秀男

■報告2
全教員が共有化できるSIづくりのために
週1回機関誌を発行

岐阜県立岐阜高校
報告者 ●小池秀男先生



 SIづくりの過程で苦労したのは、理念の共有化の問題です。今日はそこに力点を置いてお話します。
 '99年度、私たちは30代をメインとした教員が三つのグループに分かれ、中国・九州地方の先進的な7校に学校訪問をしました。訪問後、その報告交流会を教頭を交え飲み会のような形で開いたのですが、そこで話題になったのは、SI構築のための組織をきちんとつくった方がいいということでした。こうして生まれたのが「21世紀将来構想委員会」で、'99年の11月のことです。
 委員会のメンバーは、各校を訪問した先生方を中心とした8名です。平均年齢は当時35.5歳。私一人で年齢をつり上げているので、35歳を切る先生の方が多いというメンバー構成でした。
 最初の会合で確認したのは、「岐阜高校はもうじき創立130周年を迎えるが、そこに偶然居合わせて、教育理念の再構築に携われるのは、教師として一回あるかないかのチャンスだ。少なくとも20年は通用する理念を構築しよう。ただし自分たちだけでプロジェクトを進めるのではなく、職員、生徒、保護者、OB、地域などから広く意見を求めて、それを集約して提示していこう」ということ。この思いは、今も持ち続けています。
 私たちがまず取り組んだのは、「どんな生徒を育てたいか」「岐高生の優れている点・欠けている点」という教師へのアンケートでした。その結果先生方は生徒に、自主性、自立性、人間的な豊かさ、社会性などを求めていることが分かりました。私たちはこのアンケートを参考にしながら、これを生徒が具体的に行動を起こしやすい文言にできないだろうかと考え、3月に私たちが目指す学校生活のテーマを「学ぶ・考える・思う」という三つの動詞で言い表すことを提案しました。
 4月になり、新メンバーを自薦他薦で募集しました。元をたどれば飲み会の席で発足した会ですから、もっとオープンな組織にしなくてはと考えたのです。1名が異動で去り、新たに4名が加わって計11名となりました。こうして次は「学ぶ・考える・思う」の下部概念を策定する作業に着手しました。

新メンバーとの意識のギャップが明らかに

 さて、会合は毎週1回開いていたのですが、委員会の空気がどんどん重くなっていきました。新しい委員が会議中に沈黙しがちだったんです。何だかおかしいと感じていたのですが、6月になってようやく、新委員から会議の進め方に対する違和の声が出てきました。彼らは「そもそもなぜ“学ぶ・考える・思う”でなくてはいけないのか」と言うんです。我々が前提として進めてきたことに対する根源的な異議の表明です。私たちはハッとさせられました。新メンバーは、我々の活動に共感を抱いて積極的にかかわろうとしてくれた人たちです。それなのに、旧来のメンバーと新メンバーに意識の溝があることが明らかになった。と言うことは、委員とそれ以外の先生とのギャップはもっと大きいのではないだろうか。
 私たちは「学ぶ・考える・思う」を提示した後、他の教員に対して情報を発信してきませんでした。もう少し詳細が固まってから打ち出したいという思いがありました。しかしそれは違うんじゃないか。委員会がどこで躓(つまず)いているのかまでリアルタイムで報告することが、先生方との問題意識の共有化を図る上で大事なのではないかと気付いたのです。そこで私たちは、「21Cの風」という機関誌を毎週1回出すことにしました。議論の過程をつぶさに先生方につかんでもらうのが目的です。
 本校のSIづくりは、まだ緒についたばかりです。今後は、教員ばかりでなく生徒や保護者、OBの思いも取り入れていきたいと思っています。特にOBについては、20代から30代の若い層がどう思っているかが知りたい。委員会のホームページを通じて、意見を寄せてもらうことを考えています。

21Cの風



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