VIEW21 2000.10  特集 SIづくりから始まる学校改革

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写真 上原洋祐

■報告3
社会が要請している人材
という視点からSIづくりを進める

福岡県立修猷館高校
報告者 ●上原洋祐先生



 修猷館は会議が少ない高校です。教師全員による職員会議は、年に10回もないほどです。ではどこが主体となって動いているかというと、先程もお話したように学年会です。しかしそれぞれの学年会がバラバラでは、学校全体としての活動ができません。そこで私たちはまず、三つの学年の主任と、進路指導部、教務部、生徒指導部の3分掌の主任主事で構成する「三主任主事・三学年主任会」をつくりました。授業や学校行事、部活動など、学校運営に関することをここで話し合って、各学年会に下ろしています。反対に学年会から出てきた課題は、「三主任主事・三学年主任会」に持ち上げ、議題として意思の疎通を図ります。SIづくりもここを中心に行っています。
 さて、SIをつくる上で重視したのは、現代社会の中で高校教育はどういう役割を求められているかということです。その中でもA高でもB高でもなく、修猷館はどんな人材を輩出することを期待されているかをつかめれば、自ずと本校の進むべき道が浮かび上がってくると考えたのです。
 私たちはシンクタンクやマスコミ関係者など、社会の第一線で活躍している方の話なども参考にしながら、21世紀の教育の方向性を探っていきました。そして、内容知(目標達成に必要な知識・技能の獲得)、方法知(目標達成の学び方・論理的な考え方の獲得)、自己知(自己の在り方・生き方の発見)、社会知(社会状況に対する正しい認識)の四つの知を養成することが、これからの時代は大切になるのではないかと想定しました。この中でも私は、自己知と社会知が重要だろうと思っています。今度出された学習指導要領にも「社会的自己実現」という言葉が使われていましたが、個人が生き生きと活動でき、しかも社会に貢献できる人材を育てることが今後カギとなるはずです。

図2 教育課題の把握とSI構築の進め方


生徒の主体的な学習のためにシラバスを作成

 次にこれを踏まえ、修猷館としてどのような指導をしていくかのグランドデザインづくりに着手しました。「21世紀の日本を担い、世界に羽ばたく高い志を持った人材」を輩出することを目指し、学校行事、「総合的な学習の時間」、教科の学習などの各取り組みについて、それぞれ3年間の目標を立てました。例えば学校行事の目標は「数多くの集団活動体験」「集団活動を通して社会性や協調性の育成」「大集団を動かす中で創造性や指導力を育成」となっています。さらに、学校行事なら学校行事の各学年ごとの目標も設定しました。
 実は、私たちの高校で特に重視しているのは学校行事です。学校行事は人間関係づくりに有効です。行事を重ねるごとに新たな人間関係ができあがり、学年を越えて重層的な集団になります。また、自分たちで企画して活動する中で、集団の中で個を生かす力や協調性、リーダーシップも養われます。得られるものはとても大きいのです。生徒指導部が'99年に行った生徒と教師に対するアンケート結果でも、「教科を越えた人間的実力」の育成を期待し、重視する声が「進学のための学力」より高くなっています。ただし、ひと口に学校行事と言っても、団結性を高めるものもあれば個性を伸ばすものもあります。今年中には学校行事を整理・分類してシラバス化しようと考えています。
 一方、授業時間の削減が学力低下につながることがないよう、今までの教科指導を部分的に変える必要があると考えました。学校の授業が減るということは、生徒の自由な時間が増えるということです。つまり、生徒が主体的に授業や家庭学習に臨む力を身に付けられれば、これを乗り越えられるはずです。また、これまでの「授業のための家庭学習」から「家庭学習のための授業」へと考え方の転換も必要かもしれません。
 そこで本校では、'99年度の研究授業から、各先生方にこうした授業を試行してもらっています。先ほど使った言葉で言えば、内容知ではなく方法知中心の授業をいかに展開していくか、皆で模索しているところです。研究授業は相互参観自由です。模索中ですから、失敗を恐れずどんどんチャレンジしようという精神で展開しています。
 また、生徒が自ら主体的に学習に取り組むためには、3年間どのように各教科を学んでいくのか知っておくことが重要となります。そこで本校では1年間かけてシラバスを作成し、'00年度新入生に配布しました。

図3 修猷館高校シラバス



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