VIEW21 2001.02  特集 高校に迫りくるIT化の波

▲目次に戻る

★Q&A★
高校で「IT化」を進める上で解決すべき五つの疑問


 既にパソコン教室を設置し、校内LANも設置している高校は多いが、ほとんどの高校はこれから本格的なIT活用を進めようとしている。IT担当にはコンピュータに詳しい教師が当たることが多いが、実際に校内のIT化を進めるにあたっては、戸惑うこともあるに違いない。そこで、校内のIT化を進める上で多くの高校がぶつかる問題点について、先進的な高校の経験を踏まえながら、その解決の方向を考えてみたい。

Q1 教師へのコンピュータの浸透

校内に置かれているパソコンの台数が最近増えてきた。しかし、一向に使う教師の数が増えない。コンピュータ担当としては、多くの先生に活用してほしいと考えている。どうすれば利用者を増やすことができるだろうか?

A
 数学では一部コンピュータに関係する内容を扱うが、それ以外のほとんどの教科では、教科内容にコンピュータを使った部分がない。したがって、授業を進めるに当たっては、コンピュータは一部の先生だけが利用できればよい機器に見える。しかし、「生徒の教科に関する興味を広げる」という視点から考えると、授業をより楽しくする仕掛けとしてパソコンは有効な道具となりうる。例えば、インターネットを使った情報収集についてはすぐにでもほとんどの授業に取り込むことができる。また、テスト結果の検証や面談などの場でも、コンピュータの情報処理能力をうまく使えば、生徒の納得度を高めやる気を促し、生徒と教師の関係を深めることもできるだろう。まずは、コンピュータを活用することで生まれる利点を伝えたい。
 しかし、利点については理解できるが、どうしてもコンピュータには抵抗があるという教師も少なくないだろう。そのようなコンピュータ嫌いをなくすには、とにかくパソコンに向かう時間を長くすることから始めたい。この場合、個人的に興味のある内容について検索したり、囲碁や将棋といったゲームから始めてみるなど、少しでも長くパソコンの前に座っていられるのなら、最初は何でもよしとしてはどうだろうか。コンピュータが苦手と公言していた教師が、インターネットから情報を取り出したりすると、他の教師に対して大きなインパクトがある。教師が互いに刺激し合うような仕掛けも考えたい。
 コンピュータでの指導を受けた生徒の口コミに、周囲の教師が触発されパソコンを使いだした例もある。ある教師が授業の配布資料や面談の資料をパソコンを使って作ったり、三者面談をパソコンの画面を見ながら行うなど、直接、パソコンを使った指導を行っていたところ、指導を受けた生徒たちから、「あの先生の資料は分かりやすい」と評判になった。生徒たちはそれと同じくらい分かりやすいものを、他の教師にも求める雰囲気が生まれ、一気に教師の活用につながったという。それまでの資料内容と大きく違わない場合でも、見た目の真新しさやデータの見やすさなどから評判になることもあるという。

図3 コンピュータで指導できる教師の割合

Q2 ホームページ開設

「開かれた学校づくり」の一環として学校のホームページを立ち上げ、調べ学習の成果や、部活動や生徒の様子を公開する予定だ。外部からも閲覧できるようにするつもりだが、その際どんなことに注意すべきであろうか?

A
 学校のホームページを開設する場合、外部からも見られる情報と内部でしか見られない情報を分け、それぞれに必要な制限をかけておく必要がある。情報は種類によって大きく三つに分けられ、最も厳しい制限が必要なのは、成績などの生徒の個人情報といった「プライバシーに関わる情報」、次に学校内で生徒と教師が見られる「学校内情報」、そして外部の人も見られる「公開情報」だ。
 大学などインターネットの導入が早かった機関では、大学案内やシラバスなど既に公開されている情報はホームページで誰もが見ることができ、開講状況やテストのスケジュールなどは校内だけに、学生の成績などの個人情報は校内でも一部の人だけしか見られないように制限をかけ、見ることのできるパソコンも限定している。
 高校でホームページを立ち上げる時も、どの情報をどこまで公開するのかを吟味し、また個人情報をやり取りする校内のネットワークとは切り分ける必要があるだろう。
 しかし、このように厳しいセキュリティをかけても、パスワードやIDをパソコンに貼り付けたり大声で確認し合っては、せっかくのセキュリティも台無しである。システムのみならず、外部に漏らしてはならない情報を扱っているという意識も大切だ。


<前ページへ  次ページへ>

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。