VIEW21 2001.04  今日と明日の活力をもたらす創意工夫
 学校活性のヒント 群馬県立沼田高校

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群馬県立沼田高校

入学直後の学習指導をきめ細かく行い、
高校生への意識の切り替えを促す

 高校1年生が「中学4年生」と呼ばれるほど、新入生の学力や進路意識は低下していると言われている。中学生から高校生へと意識の切り替えを生徒にさせるために、各校では様々な指導の工夫を行っている。
 群馬県立沼田高校は、特に入学直後の指導を重視している学校だ。進路指導主事の益子定先生は、生徒の授業態度を見て、スタート時期のきめ細かい指導が不可欠と感じたという。
 「授業でノートを一度も取ったことがないという生徒がいたことには驚きました。中学校ではそんな授業態度でも良い成績を取れていたのでしょう。しかし、それでは当然、高校の学習にはついていけない。でも、予習・復習をしたことがない生徒にとっては自宅学習のやり方すら分からないのです」

学習合宿で意識転換を促す

 同校では'00年度から4月下旬に、新入生を対象に1泊2日の学習合宿を行っている。約240名の生徒に、予習・復習の仕方、ノートの取り方など、中学校とは違う「高校での勉強の仕方」をみっちりと教えるのだ。生徒が習ったばかりの学習法を実践できるようにと自習時間も設けている。また、入学時の生徒の学力をきちんと把握するために、「スタディーサポート」を入学直後に実施し、学習合宿の入所式講演会で、学年全体の学力の状況や弱点を分析した結果を生徒に伝えた。具体的にどこをどう勉強すれば学力はアップするのか、学年全体の共通認識として、教師と生徒で共有したのだ。この学習合宿を運営した松本和行先生は、生徒の様子をこう話す。
 「『せっかく勉強するために合宿に来ているのだから、今ぐらい頑張って勉強せい』とはっぱをかけてみると、消灯後も廊下の明かりで勉強している生徒が数名いたんです」
 「生徒に学習合宿の感想を聞くと、『勉強の厳しさが分かった』という声が多く挙がりました。実際、その後生徒の授業中の学習態度も好転してきました」(益子先生)

学習時間をランキング発表

 学習面の一斉指導は、学習合宿以外にも進路講演会や学年集会など、機会がある度に行っている。しかし、益子先生は個人レベルの対応も重要と考え、担任に個別の学力に応じた指導を心掛けるように伝えている。
 「生徒には何回も繰り返して言わないと、教師の言いたいことはなかなか伝わらないものです。毎日接している担任が生徒一人ひとりに働きかけ、生徒各自の状況に応じた指導を行うことが肝心なんです」(益子先生)
 松本先生のクラスでは、毎週月曜日に前週の科目別の学習時間を生徒全員に申告させ、それをランキング表にして、学級通信に掲載し、火曜日に生徒に配布してみた。
 「学習時間をランキング形式で公表することで、生徒の間で競争意識が芽生えました。ゲーム感覚から、勉強し始める生徒もいました。ともすれば他人に無関心な生徒に対して、そういった仕掛けを作ることも必要なのではないでしょうか」(松本先生)
 頑張っている生徒の学習時間を目にすることで、他の生徒にも発奮してほしいというねらいは当たった。クラス全体に学習に対する積極性が生まれただけではなく、学習意欲の低い生徒が安易な方向に流れるのをくい止められたと、松本先生は感じている。

 
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