VIEW21 2001.10  IT Introduction 情報技術が学校をどう変えるのか

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情報管理ツールとしてのIT活用

ITで事務を効率化し人として触れ合う指導を

 インターネットをはじめとするIT活用には、生徒への進路・教科指導に多大なメリットがある他、教師の日常業務の効率化が期待される。生徒の成績や生活記録の管理がIT化されることによって、単に事務処理上の負担が軽減されるだけではなく、生徒への進路・教科指導も一層充実させることが望まれる。情報管理ツールとしてのIT活用を積極的に行い、指導の充実を図っている長野県飯山北高校の上平正明先生に、同校の具体的な取り組みについてうかがった。


サーバによる一元管理で生徒のデータを共有化

 飯山北高校では、'96 年10月から高校入学時の願書や在学生の成績、さらに卒業生の進路の統計や名簿づくりに至るまで、共有サーバによるデータ管理を進めてきた。
 「当時はクラス数の減少で教員数が削減されたこともあり、仕事の効率化を図ることがデータの共有化の大きな目的でした。現在では校内の分掌がすべてサーバによって一元管理され、生徒一人ひとりについて、成績だけではなく健康診断の結果なども集約されています。生徒の志望調査や学習時間調査もマークシート形式にして集計が容易になり、日常の指導にタイムリーに活かしやすくなりました」と上平先生は語る
。  コンピュータの操作についても先生方へ浸透するのに思ったほど時間はかからなかったという。
 「多くの先生方にはかなり抵抗感があったので、最初にゲームソフトの操作で慣れてもらいました。パソコンの操作法やデータの取り出し方をまとめたマニュアルを作成して、パソコンに不慣れな先生の負荷を少なくしたところ、どの先生も案外早く慣れ、マニュアルはすぐに不要になったのです。生徒のデータを手書きで転記していた頃に比べると、いわゆる作業にかける時間は大幅に減りました。技術的な問題以外では、共有化によって先生個人が持っている生徒の情報を共有することへの違和感や、成績のすべてが共有されることについてのプレッシャーがあったようです。しかし現在では、全員で生徒の状況を把握できるので概ね好評を得ています」

同じデータでも見せ方で説得力に差

  同校では毎年5月に進路指導総括会議を開き、卒業生の進学実績等を集計し報告しているが、ここでもコンピュータによるデータ管理の成果が現れているという。
 「過去の累積データを比較的簡単に集計できることが分かったと同時に、データをビジュアル化して見せることが予想以上に効果が高いことを改めて認識しました。連続印刷で、一括して生徒の個人データを個別に印刷し、配付できるのがIT化の一番のメリットです。また、過年度のデータや他校のデータとの比較から、どのような指導を行えば生徒が伸びるのかといったことを、具体的な数値と共にグラフや図を用いて視覚的に訴えると、他の先生方の納得度が全く違います。職員会議で図やグラフを活用した資料が出されるようになって、先生たちのコンピュータ活用への意識も高まりました」
 同校が'97 年4月から発行している進路だよりである『進路情報』も様変わりした。
 「進路や教科学習、日常生活のポイントなど、先生方にとっては見慣れた情報でも、生徒や保護者にとっては初めて見るものであることが多いのです。ですから図表の活用や字体の工夫で紙面を見やすくし、説得力を持たせていかないと、せっかく情報公開をしても保護者の理解や協力を得ることが困難になります。先生方はコンピュータを使って、いろいろと読んでもらう工夫をこらしています」
 また同校では、昨年までの3年間、地域の方を対象とする『学校開放講座』を実施したが、昨年のパソコン講座では多くの先生が講師として参加し好評だったという。
 「ITに関する先生方の知識は、数年前より格段に高まっています。このような形で地域の人と交流を図ることも、学校を知ってもらう良い機会だと捉えたいです」


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