VIEW21 2002.10  点から線の教育へ 中・高・大接続の深化形

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 次に、先の「取り組み状況」でもほとんどの高校が実施しており、かつ自校の特色をアピールできる場として「今後益々力を入れたい」と考えている「学校説明会」の実施状況について概要を報告したい。

【2】学校説明会

(1)実施状況
時期は夏と秋、対象は中3生+保護者、場所は自校が主流

 「学校説明会」の実施時期は7月下旬〜8月下旬の夏休み期間と10月頃に集中している。昨年と比較すると、夏の開催が増えており、早期化、複数回化の動きが見られる。対象は「中3生と保護者」が一般的だが、「全学年」を対象としている高校も私立で3割強、全体で2割近くある。
 開催場所は、ほとんどが「自校」。ただし、公立高校の場合、県によっては中学校が説明会を開催し、高校の教師が中学に出向いて説明するという形態をとっているケースも見受けられた。

(2)発信内容
「SI」「学校生活」「進路実績」が3大柱

 「学校説明会」で特に力を入れて発信している内容については、公立、私立問わず「自校の教育内容やカリキュラムの特色」「育てたい生徒像」という自校のSI(スクール・アイデンティティ)を挙げる回答が非常に多く、8割〜9割に上っている。これに「学校生活やクラブ活動紹介」と「進路実績」というのが、説明会の発信の中心的内容となっている(図5)。
 興味深いのは、公立高校と私立高校の発信の力点の違いである。私立高校では、「本校で目指している学力目標」や「卒業生の進路実績」など、自校の教育目標とその実績(成果)を示すことにより力点を置いている高校が多い。高校3年間でどのような力が身に付けられ、その結果どのような進路が実現できるのか、教育内容と共に、学力と進路の保障が重視されていることが分かる。一方、公立高校では、割合そのものはそれほど高くはないが、「高校入学までに身に付けておいてほしい力」「中学と高校の勉強の違い」「家庭での生活・学習習慣の大切さ」について、力点を置いているという回答が私立高校のほぼ2倍となっている。中学生の「学習習慣の未定着」が中高接続の取り組みの背景にある課題認識として挙がっており、入学以前の学校説明会の場でも中学生に自覚を促そうと試みている様子が読み取れる。

図

(3)プログラムの目玉
「体験授業」「在校生の説明・交流」により
中学生に“体感”してもらう

 「学校説明会」のプログラムの目玉については、「体験(模擬)授業」などを挙げる回答が非常に多かった(図6)。高校の授業がどのように行われているのかを中学生に肌で感じてもらえるプログラムとして、各校で様々な工夫を凝らしつつ、取り組んでいる様子が窺える。授業だけでなく、部活動や校内施設の見学も同時に行っている高校も多い。また、3年間の高校生活の様子を中学生にイメージしてもらえるよう、自校の紹介ビデオを上映している高校もかなりある。
 在校生(生徒)を巻き込んだプログラムを目玉としている高校も多い。在校生による学校紹介、パネルディスカッション、中学生との座談会、部活動のパフォーマンスなど、その取り組みは多彩であるが、中には説明会の企画・運営そのものを生徒が中心になって行っている事例や、在校生が中学生に勉強を教えるといったユニークな試みもある。全体的な傾向として、「体感型」の取り組みに力を入れている高校が多かった。

図

(4)今後充実させたい情報
「カリキュラム」「シラバス」の開示と
ビデオ・HPでの学校生活の紹介など

 今後、説明会で充実させたい情報については、「カリキュラム」や「シラバス」を公開し、自校の教育内容を具体的に中学生や保護者に伝えていきたいと考えている高校が多かった。
 また、ビデオやホームページ等の視聴覚に訴えるツールの活用を挙げる高校も多い。高校生活へのイメージを持たせる手段としては、その他に「学校生活を上手に過ごした生徒の事例」「どのような高校生活を送った生徒がどのような進路を獲得できたかを分類し、データで示す」「入学時に低位の成績だった生徒が3年間でどれだけ成績を伸ばせたかを示すデータ」など、中学生に高校生活でのロールモデルを示すような情報の充実を挙げる回答も見受けられた。また、学習面だけでなく、部活動や生徒会活動などでの生徒の活躍ぶりを伝えたいとする回答も多かった。


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