VIEW21 2002.12  創造する 総合的な学習の時間

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B:活動を深化させ続ける

 取材をした実践校に伺うと、「やってみて初めて分かった」ということは非常に多いようだ。従って、毎年の活動総括を基に、取り組みをより自校の生徒に合ったものに深化させ続けることが重要だと言う。
 では、活動総括を充実させ、活動の成果を確認し、継承・発展させていくというプロセスはどのようなものなのか。徳島県立阿波高校の事例(02年2月号掲載)を基に考える。
 阿波高校では、生徒の「体験」「体感」を重視した「進路学習」の取り組みを実践している。同校の取り組みは、まずは1年生の「就業体験」を実施することから始まった。自分の将来をリアルに描けない生徒に対し、自ら動き、考える「体験」を通じて進路選択力を付けさせたいと考えてのことだ。当初は半信半疑だった教師もいたが、活動後の、生徒、保護者、教師へのアンケート結果からは、予想以上の手応えが得られた。
 そこで、この「体験学習」の成果、ノウハウを2年生でも生かせないかという声が上がり、次年度には大学の「1日体験入学」が企画された。すると、今度は「体験入学」で興味を持った学問分野のテーマ学習を行ってはどうかということになった。そこで、「体験入学」で生まれた大学とのパイプを生かし、研究テーマごとに大学教授のサポートを受けられるようにした。
 このように、阿波高校では前年度の活動総括に基づき、成果のあった取り組みのノウハウをうまく生かしつつ、次年度の取り組みを企画し、3年間の進路学習の体系化を図ってきた。同校の実践は、初めから完璧な活動体系ができていないからといって尻込みするのではなく、活動総括を通じて見えてきた成果やノウハウをうまく次年度の活動に生かしていくことで、取り組みを深化させていくことができるということを教えてくれる。
 他の高校でも、「活動総括をした結果、本質的な課題が見えて、教師間の問題意識が深まった」「活動に毎年何らかの改善を加えていくことで、生徒・教師双方にとって、より理想的な活動形態が生まれつつある」という声は多く、総括、点検に基づく活動深化の重要性が分かる。

図4 徳島県立阿波高校の活動深化プロセス
図

( まとめ )

 今回は、「生徒の主体性の引き出し方」と「活動の継承・発展」という課題に絞って実践校から見える成果を振り返ってみたが、「総合学習」を巡るもう一つの大きな課題として、「教科学力の向上にいかに結び付けていくか」という視点がある。この点については、次号掲載予定の、実践校の先生方による座談会の場で考察していきたいと考えている。

※本誌の過去の掲載事例はすべて「ベネッセ教育研究開発センター」に掲載しています。是非ご覧ください。


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