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小売業の枠、国境の垣根を越え飛躍するコンビニ
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生活のインフラとして不動の地位を築いたコンビニに変化の兆し
 日本にコンビニエンスストアの第一号店ができたのは1974年。以来30年に渡り、コンビニ産業は目覚ましい躍進ぶりを見せ、バブル崩壊後の不況による消費低迷で百貨店やスーパーの売上が大きく落ち込む中、売上高、店舗数共に増加の一途をたどってきた。
 コンビニが登場した当時、大規模な小売業者に対しては出店に関する厳しい規制が敷かれていた。60年代後半、急速に台頭してきた大型スーパーの出店攻勢の影響で、市場を奪われた中小の小売店が軒並み閉店。そのため72年、政府は大規模小売店舗法(大店法)を施行し、中小商店を保護する政策を打ち出したのである(大店法は90年代、3度に渡って改正。現在は大規模小売店舗立地法となり出店規制は緩やかになっている)。
 そこで、出店を抑えられた大手スーパー各社は、スーパーに代わる業態として、大店法の適用を受けない小規模の小売店であるコンビニの出店を開始した。深夜営業や幹線道路を狙った出店戦略を展開し、深夜の買い物を望んでいた単身者や車で移動中のドライバーなど、従来の小売店が取りこぼしていた顧客を取り込んだのである。そして、80年代以降、「生活のインフラ」としてコンビニ産業は急速に発展していった。
 こうして巨大産業に成長したコンビニ産業にも、近年、変化の兆しが現れてきている。
 以前は、新規出店数は増える一方で、コンビニ大手が既存店を閉鎖することはほとんどなかった。ところが90年代後半から、新規出店数10店に対して5〜6店程度の既存店が閉鎖されるようになったのである。新規出店数が既存店閉鎖数を上回っているため、店舗数の実数は増加しているものの、前年比の増加率は徐々に低下してきているのだ(図1)。売上高(全店)も同様である。
図1
 さらに注意すべきは、既存店の売上高前年比では、過去5年間のほとんどの年でマイナスを記録していることである。つまり売上高(全店)の増加は、新規出店で賄っており、既存店ベースで見ればコンビニ産業の成長はほとんど頭打ちの状態なのである。
 この原因は、主にコンビニ各社のオーバーストア(過剰出店)による。大手を中心に次々と出店攻勢をかけていった結果、各店舗で顧客の奪い合いをすることになったのだ。加えて、スーパーの深夜営業が増え、コンビニが開拓した深夜の需要を奪い始めている。
 コンビニ産業は今、大きな転換期に差し掛かっているのである。
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