ベネッセ教育総合研究所
特集 自学自習力の育成
PAGE 7/20 前ページ次ページ


生徒が自分でモチベーションを管理できる力を身に付ける
――学習モチベーションの発掘は、生徒一人ひとりの精神的発達段階や個性と表裏一体のものだという印象を持ちました。しかし、一斉指導をベースとする学校現場では、生徒個々人の状況に即した指導は難しい面があるのも事実です。
 その点は確かに学校が抱えるジレンマですね。一つの方向性としては、生徒に自分自身で自らの学習モチベーションを管理していけるような力を身に付けてもらうことが考えられます。例えば、私たちが行ったある研究では、生徒の学習動機の個人差分析を行った際、その結果を生徒にもきちんと開示しました。自分がどのような人間であるのかを知ってもらい、「自分はどんな理由があれば学習に向かうことができるのか」を考えてもらいたかったからです。もし、このような自己理解が進めば、「自分は関係志向が強いから、友達と一緒に図書館に通うように習慣付ければ有効なんだな」という具合に、学習モチベーションを自ら維持していけるようになるかも知れません。幸い、現在の学校現場では「総合学習」等を通じた「自分探し」の取り組みが活発に行われています。その成果は進路学習などに主に生かされていますが、今後は自分に合った学習方略や学習モチベーションの在り方を考えさせる方向に展開していってもよいのではないかと思います。
――なるほど。生徒自身に、どんな学習者になりたいのか考えさせるわけですね。
 ある意味で生徒の「自律的に意欲を呼び起こさせる力」を信頼することだとも言えます。そうした場合、授業等で、あらかじめ「学習目標を明示しておく」というアプローチも考えられますね。これはある中学校との共同研究での事例なのですが、数学の授業で、生徒が自分で作った問題とその解答を、作品にして発表したり論文にしたりするのです。「クラスのみんなに見せるものだからきちんとしたものを作ろう」という動機づけがベースだったのですが、注目したいのは、「作問を通じて新しい概念に慣れる」「模範解答の作成を通じて答案作成力を身に付ける」「作品を共有化して討論する」といった具合に、生徒にこの取り組みの意図をあらかじめ伝えておいたことです。小中学校ではこうした「教師側の目的」は伏せておき、「発見する喜び」を感じてもらえる授業をつくりたいと考える先生が多いようですが、場合によってはそうした考え方を変える必要があるかも知れません。
――高校現場に置き換えると、シラバスの作成などが「目標の明示」に当たるのでしょうか。
 そうですね。高校現場では「予習→授業→復習」という学習の流れが前提とされていますから、それぞれのステップの学習目標をシラバスの中にも明示できれば、生徒の学習意欲をうまく喚起できるでしょうね。立てた目標を達成することは、モチベーション開拓の基本的な要素の一つですから、日頃の授業の中にもそうした要素を取り込んでいけるといいですね。
――本日はどうもありがとうございました。


PAGE 7/20 前ページ次ページ
トップへもどる
目次へもどる
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse