ベネッセ教育総合研究所
VIEW'S REPORT 変わる大学入試で求められる教科学力
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基本スキルの未定着で誤答が多い英作文
 高校入試でも、多かれ少なかれ英作文は出題されており、近年では、20〜30語程度の(自由)英作文を課す場合も少なくない。そのため、高校入学時点では、英作文を書くことにそれほど抵抗感を持たない生徒が増えてきているようだ。
 だが、受験勉強を始め、「学校の英
語の成績は良い」と自称する高3生に
英作文を書かせてみると、単語そのものは正しいものの、語の順番がおかしく、意味をなさない英文で解答してくるケースが少なくない。実際、進研ゼミに届く答案を分析してみると、与
えられた日本語に引きずられ、他動詞の後ろに前置詞を置いたり、「〜している」という日本語に引きずられて進行形にしてきたりする誤答がよく見られる。
 このような誤答の多くは、1年次で学習する基本的なスキルが定着していないことに原因があると考えられる。これでは国公立大個別学力試験で問われる自由英作文の問題(図3)には太刀打ちできない。
図3


低学年で英作文の基本スキルを習得させるために
 しかし、英作文を低学年から指導することについては、賛否が分かれるところであろう。実際、多くの高校では英作文指導を2年次後半から3年次に「ライティング」の授業で実施しており、1年次からの本格的な作文指導は、あまり想定されていないからだ。しかし、「ライティング」で想定されているレベルは、ある程度の知識のインプットなしには難しく、高1生にとってはかなりハードルが高いと言える。
 そこで1年次では、英語特有の語順の考え方を理解した上で、基本の第3文型での英文(単文)までは書けるという状態を目指すのがよいと考える(図4)。英文の最も基本的な骨組みは第3文型までであり、日常生活の大抵のことは第3文型までで言い表せるからである。
図4
進研ゼミ高校講座作成
 その上で、このレベルの単文の和文英訳などを用いて、「英文の骨組みを組み立てる力」と「適切な文法・語法を引き出す力」という基本的なスキルを習得していくことは、低学年でも必要だと考える。


作文KEYと文法KEYを用いた英作文指導
 先に述べた英作文の基本的なスキルを習得させるために、教材において以下の2つのKEYを用いた指導法を試みている。
(1)作文KEY
 日本語の発想から英語の発想へ転換し、英文の骨組みを組み立てる手掛かり
(2)文法KEY
 どの文法・語法を用いて表現すればよいか引き出す手掛かり
 具体的に「明日は午後雨になる」を英語にする問題を例に、今述べた(1)作文KEYと(2)文法KEYがどのようなものかを見ていくと次のようになる。
 まず、「明日は午後雨になる」の「明日」を主語に、「〜になる」を述語に捉えると、Tomorrow will become 〜 となってしまうので、「明日の午後には雨が降る」と日本語を変え、英文の骨組みを作りやすい状態にさせる。これが(1)作文KEYを用いた指導である。
 次に、「雨が降る」を表すときの「主語」は、天候を表すItを用いるということをこれまでに学習している文法から引き出させる。これが(2)文法KEYを用いた指導である。
 1年次では、このように簡単なレベルから、英語の語順や文法を意識しながら英文を書く練習を積むことが、英作文の基本的なスキルを習得させる上で必要だと思われる。
 このような基本的なスキルは、2年次により複雑な文(複文や修飾語句の長い文)を書く場合、さらには、大学入試対策における、和文英訳、自由英作文等の答案を作成する場合の下地にもなる。常に2つのKEYを念頭に英作文をするという意識化を低学年のうちから図ることが、受験を視野に入れた指導を行う上で大切であると考える。
図5
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2004年度進研ゼミ高1講座『エンカレッジ英語』難関大突破コース4月号「英作文講義」より


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