ベネッセ教育総合研究所
特集 広報が学校を活性化する
桐村 幸雄
京都府立洛北高校附属中学校教頭
桐村 幸雄
Kirimura Yukio
教職歴30年目。同校に赴任して2年目。「『教育の質を決定する最大の要素は、教師の資質である』がモットー」
沖田 悟傳
京都府立洛北高校附属中学校
沖田 悟傳
Okita Noritsugu
教職歴25年目。同校に赴任して2年目。教務主任。「生徒と教師一人ひとりが輝くような教育を行いたい」
山口洋典
京都府立洛北高校
山口洋典
Yamaguchi Hiromichi
教職歴23年目。同校に赴任して5年目。進路指導部長。「生徒の能力・適性を発見し、未来の設計図を一緒に考えたい」
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COLUMN
提供する情報の質とタイミングを考える
〜京都府立洛北高校・附属中学校の戦略〜

 京都府立洛北高校は、04年度から併設型の中高一貫校へと移行した。6年間の教育期間を生かし、ゆとりある教育を実現することがその目的である。だが、「公立の中高一貫校という存在自体が、京都においてはまだ十分に認知されていなかった」(桐村幸雄教頭)のも事実。そこで同校では、03年に「中高一貫教育プロジェクト」を中心に広報戦略を立て直し、改革の成果を効果的にアピールしようと試みた。ポイントとなったのは学校説明会の開催時期と、その時々に提供する情報の精選である。
 「第1回の学校説明会は5月に実施しました。その際はまず、公立高校における中高一貫制とは何を目指したシステムなのか、あるいは、学校としてどのような生徒を育成したいのかといった、どちらかと言えば大きなビジョンについて語りました。一方、8月、11月に設定した2、3回目の学校説明会では、カリキュラムの詳細や学校設定科目として設けた『洛北サイエンス』の細かな内容、学校生活の見通しといったより具体的な情報提供を試みました。配付したリーフレットも5月の第1回のものは学校の理念やカリキュラムの概念を示したもの、2回目以降はより詳細な教育内容のものに変えて、カリキュラムについても独自のプリントを用意して説明しました」(沖田悟傳先生)
 言わば二段構えのアプローチを取ったわけだが、もちろんこのアプローチには意味がある。すなわち、第一回目の学校説明会は、小学校教師や地域住民、マスコミ等も含めた不特定多数を相手にしたプレゼン、2回目以降は、実際に受験を考える小学生とその保護者向けのプレゼンと位置付けたのだ。
 「学校説明会の参加人数は、1回目が5000名だったのに対し、2回目、3回目が2500名前後でした。参加者の内訳を見てみると、小学6年生とその保護者などの割合が回を重ねるごとに増えていきました。実際に受検することを考える参加者ほど詳細な情報を必要としますから、次第にリピーター率も上がっていったようです」(沖田悟傳先生)
 こうしたアプローチが奏効し、洛北高校附属中学校の第一回入学生は全員が第一志望として同校を受検した。合格発表が終わってからの入学辞退者もゼロ。学校の教育理念、カリキュラムをしっかりと理解して受験した生徒がいかに多かったかを印象付ける結果となった。初年度の広報活動はひとまず成功と言って良さそうだが、同校の教師たちは更なる改善に取り組もうとしている。
 「入学した生徒たちがどのように育っているのか、という面も含めた情報提供を今年度は考えていく必要があるでしょう。また、中学校の募集戦略を機に、高校段階から入学する生徒に対する広報活動をどのように考えるべきか、という議論も必要です。今回の取り組みを機に、中学・高校が互いに刺激し合いながら、学校改革を図っていかなければならないと思います」(山口洋典先生)



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