ベネッセ教育総合研究所
特集 学力多層化への対応
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1 初期指導
point!
・学校への信頼感の醸成
・下位層をつくらない
 全体の学力レベルを上げていくためには何よりも「下位層をつくらない」ことが大切だ。   
 「下位層の底上げを図ることが全体のレベルを上げ、それが上位層を上に引き上げることにもつながるのだと思います。上位層の生徒を伸ばすことだけを考えて、下位層を顧みないようでは学校全体が元気をなくしてしまうことになりかねませんからね」(水野先生)
 特に近年は、塾通いの生徒が増えてきたことで、初期指導(図2)の重要性が一層増しているという。
図2
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これについて、3学年主任の小嶋輝久先生は次のように指摘する。
 「本校でも通塾したことのある新入生が年々増えていて、04年度4月に実施したアンケートによると、入学生のうち4分の3の生徒が高校受験に備えて塾に通っていたと回答しています。塾で手取り足取り教えられてきたことで、自分で学習に向かう態度が損なわれているのではないかと思います。主体的な学びの習慣を付けさせることが、以前にも増して重要になっているのです」
 もっとも、単に塾を批判するだけでは、そこで成功体験を積んできた生徒に、かえって高校に対する不信感を抱かせ、ひいては学びへの姿勢を萎縮させることになる。初期指導で重要なのは「学校に対する安心感や信頼感を育ませること」と水野先生は指摘する。
 「塾の利点は、周囲に同じ志を持つライバルがいること、高度な知的欲求を満たしてくれること、熱心な指導、の3点だと思いますが、これらは全て岡崎高校にあります。そのことを初期の授業やオリエンテーション指導、ホームルームなどで度々話して生徒に安心感を与えるようにしているのです」(水野先生)
 塾にあるものは全て岡崎高校にある―。塾における学習によって成功体験を積んできた生徒だからこそ、かえってこうした呼び掛けが学校に対する安心感を生む。増加傾向にある生徒の塾依存の気質を逆手に取った効果的なアナウンスである。
 学校に対する信頼感を育ませる一方、学習習慣の定着も初期指導の重要なポイントだ。
 1年次の中間考査前に入学直後からの「生活の記録」を提出させて、家庭での学習習慣や生活を振り返らせることにより、まず高校での学習への移行を図る。中間考査後は1年生も上級生と同様に部活動が始まり、本格的に高校生としての生活がスタートする大切な時期。期末後は夏休みを控え気分もうわつきがちだ。ここで「生活の記録」を提出させ、それを検証してアドバイスをすることで、高校生活の基礎となる学習習慣の定着を図るのである。
 信頼感の醸成により学校の求心力を高めると共に、時期を見て適切なアドバイスを与え学習習慣の定着を図る。充実した高校生活を送れるかどうかのカギは、全てこの時期にあるのだ。


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