ベネッセ教育総合研究所
特集 学力多層化への対応
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3 進路指導
point!
・高い理想を持たせる
・学校独自の入試分析情報
 同校の進路指導の特徴は、低学年次までは志望大を幅広く捉えさせたまま学習に臨ませ、2年次後半以降に個々の志望大を意識させることだ。同校の東大進学実績から考えると、低学年次から難関大進学を見据えた学習法が採られていても不思議ではないが、特に個々の大学に絞って指導しないのはなぜだろうか。
 「よく東京大志望者のために低学年から特別なコースを設けているのかと聞かれますが、それは一切していません。本校の生徒は難関大への進学意欲が強く、成績が200番台の生徒であっても『東京大志望』という生徒が少なくないのです。したがって1・2年次には志望大を大きく捉えさせ、高い理想を持って学習に臨ませる。そして2年次の2学期頃からそれぞれの志望大を意識させる。中・下位層も学習意欲を減退させることなく、かつ上位層を引き上げるには、生徒が納得して学習に取り組めるようにすることが大切なんです」(川島先生)
 具体的な志望大を見据えた取り組みとして3年次に実施しているのが「大学入試研究会」である。生徒が志望する大学群ごとに、入試の傾向と対策を解説する取り組みで、毎年1学期に実施している。そして、この大学入試研究会を通して部活動から受験への本格的な切り替えを図っている。
 文型・理型ともそれぞれ2つのコースが設定されており、文型は「東京大・京都大志望者向けコース」と、「名古屋大・一橋大・その他の国公立大志望者向けコース」に、理型は「東京大・京都大・東京工大志望者向けコース」と、「名古屋大・その他の国公立大志望者向けコース」に分けられる。原則全員参加で、生徒には事前に希望を取り、いずれのコースに参加するのかを決めさせておく。
 研究会は前・後半に分けて実施される。前半では過去の卒業生がどのように努力して合格を勝ち取ったか、同校の3年次の実力考査でどの程度の点数を取った生徒が合格しているのかなど、入試に向けた学力養成の目安や学習法などが中心である。後半は同校教師が独自に分析した、教科別の入試問題解説講座だ。各大学・学部の特徴や傾向、対策などが、オリジナルデータを基にして、教科担任から具体的かつ詳細に解説される(図4)。同研究会の最大の特徴は、既成のデータや情報だけではなく、同校独自の分析情報を提供している点である。
図4
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 「各大学の沿革や合格最低点、就職状況などは赤本などを見れば生徒でも確認することはできますから、そこからだけでは分からない、本校の実情に応じて分析した情報やデータを提供することにしているのです」(小嶋先生)
 独自のデータに基づくきめ細かい指導、経験に裏打ちされた情報提供が生徒の学校に対する信頼感を一層強いものにし、生徒全員が志望大受験に向けた学習に本腰を入れて取り組めるようになるのである。


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