ベネッセ教育総合研究所
特集 学力多層化への対応
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習得した学習方法を自学自習力へ結び付ける「放課後自主学習」
 下位層の生徒が自学自習力を身に付けるために設けられているのが「放課後自主学習」だ。学習方法習得体験学習によって学習の仕方を身に付けた生徒が、実際に自主的に勉強するための場である。部活引退後の3年生は全員参加が義務付けられているが、1、2年生も部活動未加入の生徒の多数が自主的に参加する。(1、2年生には補助教室が、毎日18時まで開放されている。)
 放課後自主学習では、自学自習の姿勢を身に付けるために、生徒に自分で勉強する内容を決めさせている。生徒は、基本的に予習・復習に取り組み、教材は教科書や課題などから各自の判断で選ぶ。ただし03年度3年生の場合、2学期は基礎力徹底を図ることを目的に、センター試験の過去問の中でも基本的な問題に取り組ませたという。上位層の生徒にとっては簡単だが基礎の確認になるし、下位層の生徒にとっては一生懸命チャレンジするうちに、センター基礎レベルの問題はクリアできるだけの学力を身に付けることができるというわけだ。
 ただし平山先生は、「放課後自主学習の狙いは、あくまでも自学自習力の養成」と語る。
 「実は放課後自主学習をスタートさせた当初は、まず1時間目にプリントを配って生徒に取り組ませて、2時間目に問題の解答解説をしていました。すると、生徒はその場では一生懸命勉強するのですが、それだけで勉強した気になって、自宅学習をしなくなる傾向が見られたんです。これでは本来最も重要である授業の予習・復習が疎かになってしまいます。そこで放課後自主学習では、生徒に自分でやるべき内容を決めさせることで、宿題や予習・復習に取り組める時間にしたのです」
 生徒にただ教材を与えてやらせているだけでは、受け身の学習から脱却できない。生徒自身が学習に向かう環境づくりが大切なのである。
 更に、放課後自主学習においては、「生徒に自分の力で勉強させる」という姿勢を徹底している。時間内は私語はもちろんのこと、教師に対する質問も受けつけない。自宅で勉強しているときと同じ条件を設定しているわけだ。しかも周りに勉強しているライバルがいる分、自宅とは違って緊張感もある。
 こうして見ていくと同校では、受け身の学習になりがちな下位層の生徒に対して、まず学習の仕方を教えて(学習方法習得体験学習)、次に実践させる(放課後自主学習)ことで、受け身から自ら学ぶ学習へ生徒の自立を促そうとしていることが分かる。


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