ベネッセ教育総合研究所
大学改革の行方 法科大学院で変わる進路指導
長谷川和弘
文部科学省高等教育局専門教育課
専門職大学院室長
長谷川和弘
Hasegawa Kazuhiro
松本恒雄
一橋大大学院法学研究科教授
松本恒雄
Matsumoto Tsuneo
1952年生まれ。京都大大学院法学研究科博士課程退学。広島大法学部助教授、大阪市立大助教授等を経て現職。研究分野は民法の契約法及び担保法、消費者問題やITに関わる法律など。
森勇
中央大大学院法務研究科教授
森勇
Mori Isamu
1948年生まれ。日本大大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。デュイスブルク大学客員教授、獨協大法学部教授等を経て現職。主な研究分野は「民事訴訟法・国際民事手続法」など。
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Chapter1
初年度入試総括と法科大学院の今


入学者の3割強が法学系学部以外の出身者
 法科大学院の初年度入試は、国公私立全68大学院の総定員5590名に対して志願者数7万2800名、志願倍率は13倍の狭き門となった(図1)。
図1
 初年度の入試については実施前から、注目される点がいくつかあった。その一つが、法学系学部出身者とそれ以外の学部出身者との割合である。最終的な入学者数5767名に対して、その3割強に当たる1988名が他学部出身者。また、社会人が2792名と全体の約5割近くであることも特徴的で、社会人が全入学者の5割を超えた大学は全法科大学院の半数である34大学に達した。文部科学省は各法科大学院に、入学者数の3割以上の法学系以外の学部出身者または社会人を確保することを努力目標として課しているが、それを上回る数値だ。
 これについて、文部科学省高等教育局専門教育課の長谷川和弘氏は、「法科大学院制度の趣旨にかなった結果」だと述べる。
 「今後我が国では、知的財産の保護や医療過誤、企業法務など、法曹の活躍の場は多岐に渡っていくと予想されます。そのため法科大学院では、社会人として経験を積んだ者をはじめ、多様なバックグラウンドを有する人材を広く受け入れ、質・量共に法曹の充実を図ることが求められていますが、こうした趣旨を各大学が理解して努力してくださった結果なのだと思います」
 特に、「法科大学院は一部の人だけのものではない」と長谷川氏が指摘する通り、未修者コースの出身学部は多様だ。法科大学院は2年制の既修者コースと、3年制の未修者コースに分けられるが、入学者に占める法学系以外の学部出身者の割合は、既修者コース13%に対して、未修者コースは49%(※1)。人文科学系、理工系学部はもちろん、医学や保健学、中には芸術系学部出身者など幅広い入学者となっている。
※1 「既修者」とは、法科大学院の基礎的な法律科目の履修を省略できる程度の基礎的な学識を備えていると認められた者を指し、法学部出身者でも既修者に認定されなければ「未修者」になる。法科大学院によって、既修者コースと未修者コースの定員に分けて募集する場合と、定員を分けずに募集し、法律科目試験等の成績によって既修者を決定する場合がある。


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