ベネッセ教育総合研究所
特集 進路学習の深化を探る
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今後の進路学習に向けた4つの視点

座談会で確認したように、進路学習の深化に向けて、考えるべきいくつかの点があるようだ。では、実際に活動を見直していく観点として、どのようなものが考えられるか?
4名の先生方の示唆と最新の調査データを基に、編集部がまとめてみた。


1 進路学習に向かう土台作り
自分の将来を前向きに捉える気持ちを養う
 「職業・学問研究に取り組ませても、どこか受身。将来の目標を主体的に描こうという気持ちが乏しい」という印象を口にする教師は少なくない。前項の座談会でも、進路学習が成果を生む前提として、まず「生徒が自分の将来について考えようとする意欲を高める」必要があると指摘された。
 その背景には「たとえ頑張っても自分にはできない」と感じ、自分の良さや可能性を肯定的に評価できない生徒の存在がうかがえる。この状態で進路意識の啓発を試みても、有効な結果にはつながりにくい。生徒を進路学習に意欲的に取り組ませるためには、前提として、まず、自分の存在価値を認め、将来展望を前向きに描こうとする気持ち(自己肯定感)を高める仕掛けが必要となるようだ。


自己肯定感を高める指導の工夫
 図1からは、中学生に比べて高校生では「将来について問題を感じる」生徒が急増し、進路学習の重要性が高まっている時期だと分かる。また、「自分の性格の良い所が言える」生徒は6割近くに上り、肯定的な自己理解ができる生徒が増えている。しかし、依然として「友人の性格の良い所が言える」割合とは大きな差があることも分かる。「他者の良さは認められても自分の良さが分からない」生徒が少なくないようだ。
図1
●兵庫県教委「児童生徒の理解に基づく指導の推進に関するアンケート調査」2002年刊に基づきベネッセ教育総研が作図。
「友人の性格の良い所が言える」など、他者を肯定的に評価できる割合は小学校段階から高い。それに比べ、「自分の性格の良い所」を認識するのは難しいことが見て取れる。中学生から高校生になると「自分の良さ」が言える生徒は急増してくるが6〜7割を超えていない。「将来についての問題意識」が高まる時期でもあり、自分の良さや生き方を模索する進路学習が重要である。
 このような生徒の特徴を考えると、相互に他者の良さを指摘し合う中で、今の(ありのままの)自分の良さをも確認していくグループエンカウンター的アプローチは一つの有効な手法である。
 入学当初、今までの自分を振り返りつつ「私の夢」など将来への想いを書かせる学校は多いが、その作品をクラスメートが相互に読み合うことで友達や自分自身の良い所を再確認させる要素の盛り込みなどがその具体例となるだろう。


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