ベネッセ教育総合研究所
VIEW'S REPORT 中高6か年指導のポイントを探る
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各分掌へ権限を委譲し機動性を確保する
 学内組織の変更と共に、各分掌への権限委譲も進められた。「結果を出すためには責任だけではなく権限を委譲しなければならない」という川福校長の考えによるものだ。
 こうした動きを反映して、現在、課程主任を中心に新しい取り組みを次々と打ち出しつつあるという。課程主任は担当課程を統括し2年間を通して生徒の成長を見届けると共に、生徒の発達段階に合わせて学校行事を中心に様々なプランを打ち出す役割を持っている。各分掌への権限委譲に伴い、課程担当の間でも課程主任を中心として、生徒の二極化を防ぎ、中だるみの時期を乗り越えるための動機づけによる取り組みの強化を図っているのである。
 女子部の中期課程主任である國清英明先生は次のように述べる。
 「進学判定テストなどを課し、越えるべきハードルを設けることも有効だとは思いますが、それだけでは足りないという意見はずっとありました。そこで課程主任への権限委譲を機に、将来を考えさせる取り組みの充実を図ることで、学習への動機づけを行うという気運が教師の間で出てきたのです」
 その最たるものが、中2〜中3で行う職業研究だ。同校では身近な社会人、保護者や親戚などに対象を限定し、その結果をレポートにしてまとめることを課題とした。家族から話を聞くことで、実感のこもった情報を生徒が得られるのではないかと考えたからである。
 取り組みを推進した男子部の中期課程主任・和中正太先生は「何よりの収穫は、取り組みを通して親子の会話を生み出せたこと」と強調する。
 「今の中学生は、我々が思っている以上に保護者との会話が少ない。勤務先の企業名や職業名は知っていても、どんなところに仕事の大変さや喜び、使命感を感じているかは全く知らないんですね。仕事のやりがいについて話し合うことで『こんな大変な仕事をしている父親を改めて尊敬した』という感想を寄せる生徒がたくさんいました」
 更に、調査の結果は作文にまとめて、クラスの生徒全員が読めるようにすることで相互触発を促す点も特徴の一つである。
 「文集にしてクラスで読み合うことで、『花形だと思われていた仕事にこんな辛さがあるのか』『地味な仕事だと思っていたけどこんな喜びがあるのか』など、進路情報誌を調べただけでは分からない仕事の奥深さを知ることができたようです」(和中先生)


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