ベネッセ教育総合研究所
大学改革の行方 大学入試改革の現状と展望
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基礎学力・基礎能力を重視
図4
 図3の内容を今度は「中等教育」「高等教育」「社会」の接続の観点から捉えて模式的に表したのが図4である。この図は東京大大学院教育学研究科のCOEプログラムの認定機関である基礎学力研究開発センター長金子元久教授の資料に、筆者が入試問題との関連を加筆したものである。
 わずか10年前まで、日本の入試では、図4中段の教科学力、中でもとりわけその知識と理解が評価の中心であった。多くの大学で非常に深い知識を必要とする難問も多く見られた。だが最近では、下段の基礎学力・基礎能力が合わせて重視されるようになってきており、実際に公立中高一貫校の入学者適性検査やPISAで測られている力はむしろこちらだと考えることができる。
 金子教授は、「従来の教科学力の養成に偏った教育では、一部の大学の専門課程で学ぶ学生にはよかったが、一般の企業に就職する多くの学生に対しては課題が多かった。これに対して基礎学力や基礎能力を身に付ければ、教科学力とも相乗効果が期待できるし、社会に出てからはOJTによってより良い育成が可能になるのではないか」と述べている。筆者はこの基礎学力・基礎能力を図5のように「すべての進路の人に必要な最低限の基礎・基本の教科知識・理解」「知識活用力」「個人の適性や資質・能力」に分類定義した。
図5
最近の入試問題のカリキュラムフリー型の総合問題や小論文ではまさにこうした力が測られ始めていると言ってよいだろう。今後は更にインターパーソナルスキル(対人関係能力)や意欲、自己評価力などの測定が重要になってくると考えている。
 また、教科・科目別の入試問題や教科横断型総合問題も、以前ほど教科の深い知識を必要とする問題は多くはなく、読解力を前提にした課題解決力や論述力を見るタイプのものが多く、社会科や理科は、より現代的なテーマに基づくものが多い。
 
学部ごとに求められる力も変わる
 今度は入試全体ではなく学部ごとにどのような力を求めているかを見てみよう。
図6
図6は04年6月にベネッセ教育総研が実施した「全大学対象の学長・学部長アンケート」(※3)の結果で、今後入試で測りたい力について学部ごとに選択率を集計したものである。
※3 「全大学対象の学長・学部長アンケート」:2004年5月〜6月に全国公私立大の学長・学部長にアンケート調査を実施。国立大で有効回答率55.9%。
理系の各学部は「教科の試験で課題解決力を測りたい」という回答がトップで、文系は、概ね「専門領域への興味・関心」や「受験者の資質・能力・適性」が高い割合を示している。4年前の調査では全体的に「教科の知識・理解」の回答率が高かったので、わずか4年で変化が進んだ印象を受ける。この結果は実際に出題される入試の形態の違いにも現れており、中でも、既に国立大学法人・公立大学全受験生の約25%が受験を必要とする総合問題・小論文で学部・学科ごとに異なる問題が用意されている場合は、顕著な出題の狙いの差が見られる。

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