ベネッセ教育総合研究所
VIEW'S REPORT 新課程3年目を迎えた中学校現場
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目標のずれをすり合わせる努力を
 とすれば、中高接続に向けて真にクリアしなければならない課題とは、中学校側で必死で育成している生徒像と、高校が求めている生徒像のミスマッチにこそあると言える。浦崎先生はこのミスマッチを「中学校卒業段階での『A基準』を、中高が共通認識として持っていないこと」と感じている。
 「絶対評価の導入に伴って、中学校ではここ数年、C基準の生徒をB基準に引き上げる手立てについては相当のノウハウが蓄積されてきました。実際、この段階の指導の工夫についてはかなり精緻化されてきています。ところが、中学校ではA基準を精緻化する部分がどうしても手薄になり、現状B基準の生徒の中には、何に向かって努力してよいかが分からなくなっているような生徒も見られます」
 近年、安易に塾での学習に流れてしまう生徒の増加が問題になっているが、その背景には、中学校でA基準が精緻化されていないために、ポテンシャルの高い生徒が、学校の授業よりも、塾での学習に充実感を覚えているという側面もあるようだ。
 「塾での非主体的な学習に慣れた生徒が増えた結果、単に『テストの点数が取れるだけ』の生徒ばかりが育ってしまい、高校側が指摘する『上位層が伸びていない』という状況に突き当たっているわけです。一方、A基準の生徒を欲しがっている高校側も、求めているA基準の生徒とはどういう生徒なのかを、中学校側に必ずしも明確に伝えてこなかったのではないでしょうか。だからこそ双方の意図がかみ合わず、中高の接続が大きな問題になっているのだと思います」
 では、具体的なすり合わせに向けて、高校側はどのような姿勢で中学校と向き合うべきなのだろうか。
 「『点取り主義』への反発が強い中学校に、単に『優秀な生徒が欲しい』と伝えるだけではあらぬ誤解を持たれてしまいます。ですから、何より大切なのは、高校現場が決して、単にテストの成績が優秀な生徒を求めているわけではないことを伝えるべきです。少なくとも私の見る限りでは、高校が必要としている『自ら学びに向かう生徒』、『自学自習ができる生徒』は、多くの中学校教師が育成したいと考えているA基準の生徒像と一致しています。互いに腹を割って話し合える環境さえできれば、歩み寄る余地はきっと見つけられると思います」


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