ベネッセ教育総合研究所
特集 導入期の集団づくり
井上雅彦
兵庫県立小野高校
井上雅彦
Inoue Masahiko
教職歴20年。同校に赴任して9年。1学年主任。国語担当。「雑草のようにへこたれず、くじけず、力強く生き抜く生徒を育てたい」
菅野恭介
兵庫県立小野高校
菅野恭介
Sugano Kyosuke
教職歴22年。同校に赴任して13年。2学年主任。数学担当。「一人ひとりが大きな夢を持ち、皆で頑張れる学年にしたいですね」
幸田昭子
兵庫県立小野高校
幸田昭子
Kouda Akiko
教職歴19年。同校に赴任して7年。1学年副主任。国語担当。「生身の生徒を相手に、私自身が毎日勉強をしていると思っています」
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特集2 導入期の集団づくり 兵庫県立小野高校
実践事例
徹底した態度教育と集団の効用で人間的成長を図る

学びに向かう集団として生徒を誘うために、入学後からの導入期指導をどのように考えればよいのだろうか。生徒の意識形成に向けた働き掛けを戦略的に実践している、二つの学校の事例から考察したい。


1 態度教育と集団の効用で自覚を与える
3年間の素地を作る「集団宿泊訓練」
 兵庫県立小野高校は県南部に位置し阪神圏にもほど近い人口約5万人の小野市にある。例年、旧帝大へは30〜40名が輩出する100余年の歴史を持つ進学校だ。04年度入試では、東京大・京都大への進学者が9人から27人へ、前年比3倍増の実績を上げた。
 そんな小野高校でも、近年の生徒気質の変化は大きな課題の一つだ。それに伴い導入期における指導の重要性もこれまで以上に高まっていると、1学年主任の井上雅彦先生は述べる。
 「年々、生徒が幼くなっている印象が強いですね。入学してくる生徒を見ると、先々のことを考えて行動できない、耐える力がない、挨拶ができないといった生活面での問題を感じます。こうした生徒が、高校入学後に目標を持って、本校の45分×7コマの座学中心の授業に集中して取り組めるようになるためにも、できるだけ早く『高校生にする』ことが重要になっていると思います」
 導入期では、学習方法の習得、学習習慣の確立など、教科学習面を中心に、実践的な取り組みを考える学校が多い。小野高校においても自学自習の習慣付けは大きなテーマの一つである。しかし、それ以上に重視しているのが生活指導だ。丁寧な態度教育を通して高校生としての自覚を促し、自己形成の素地を作り上げるのが、導入期における小野高校の最も大きなテーマなのだ。
 そのことを端的に表しているのが、4月末に行われる2泊3日の「集団宿泊訓練」だ(図1)。
図1
小野高校では、この合宿には学習のための道具をあえて持参しない。集団生活の大切さと高校生活の意義、自らの将来について考える2泊3日として位置付けているためだ。
 「教科の学習法は学校でも身に付けられます。異空間の中で、その場所でしかできないことを体験することで、生徒は大きなインパクトを受け、中学校との違いを痛切に感じることになるのです」(井上先生)


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