ベネッセ教育総合研究所
特集 導入期の集団づくり
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皆で将来を話し合い学び合う集団をつくる
 また、態度教育と共に小野高校の指導の重要なキーワードになっているのが「集団の効用」である。前述の「集団行動」も集団の特性を生かした仕掛けであることに違いはないが、小野高校では、更に集団の中で個々人が刺激し合う場を意図的に組み込むことで、導入期の段階から切磋琢磨し合う学習集団をつくっている(図2)。
図2
 集団宿泊訓練のもう一つの柱である「生き方作文討議」がそれだ。「なぜ小野高校に入学したのか」をテーマに各生徒が書いた1000〜1600字程度の作文を基に、グループで今後の高校生活や将来について語り合う。「学び合う集団」をつくる取り組みである。
 作文は高校入試の発表の際に課題として示され、生徒は入学式の直後に担任に提出。集団宿泊訓練の前に、生徒は5〜6人のグループに分かれてそれぞれの作文の内容を共有しておく。集団宿泊訓練の場での討議スタイルは、年度によって異なるが、最もよいと思う生徒の作文をグループ内で選び、それについて疑問点などをぶつけながら更に内容を練り上げていく場合と、グループ内の作文を基にテーマを定め、それについて深めていく場合がある。いずれにしても、最終的にはグループで一つの作文を仕上げて、全生徒の前で発表する。
 「大切なことは、同じクラスの仲間がどのような志を持って高校に入学してきたかを知ることです。中には中学時代からその職業に就くための準備をし、具体的な職業名を挙げて、それについて調べている生徒もいます。将来について考えていなかった生徒は強い刺激を受けて、『自分も頑張ろう』という気持ちを抱くのです」(菅野先生)
 こうした集団の効用は、普段の学校生活の中にも仕組まれている。小野高校には普通科の他、商業科、国際経済科、科学総合コースがあるが、各コースの教室配置を隣り合わせにし、全科合同で行事や集会などを行っている。学年を一つの集団として意識できるよう配慮されている。あえて、多種多様な進路を目指す生徒が互いの姿を知り、刺激し合う環境を作っているのだ。例えば、商業科の生徒に向けた話も、普通科の進路に関わる話も、合同の集会の中で行われる。そうすると、普通科の生徒は「商業科は資格試験のために日曜日も登校していた」ことに気付き、商業科の生徒は「普通科では、1年生の文理選択の時点で将来の職業も視野に入れて進路選択を考えている」ことを知る。四つの科のそれぞれの進路設計のステップが生徒に刺激を与えているのである。


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