ベネッセ教育総合研究所
シラバスの活用 シラバス活用による学校活性化への視点
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3 活用対象に応じた工夫
生徒に自学自習の習慣を身に付けさせる
 続いて効果的なシラバスの内容や活用法について考えていきたい。まず生徒に対しては、先程挙げた通り、「自学自習ができない」「自分で学習計画が立てられない」「学習習慣が定着しない」といった課題がある。シラバスを通してこれらの課題に対応するにはどういったポイントがあるのか見ていこう。
 先進事例校に共通するポイントは5点挙げられる。

(1)学習法の充実
(2)学習計画表とのリンク
(3)入試と結び付ける
(4)学習目標の提示 
(5)定期試験とのリンク
 
 (1)と(2)は、生徒にシラバスを日常的に利用させ自学自習を促すためのポイントである。自ら計画を立てて自主的に学習に向かわない生徒が多い中で、具体的な学習法を示し、日々の学習量をチェックさせる工夫が見られる。
 (3)〜(5)は、生徒の学習への動機づけになるポイントである。シラバスで学習目標を明確にしたり、入試や定期テストとの関連を整理して生徒のシラバスに対する効用感を高めるなどの工夫が挙げられる。教科シラバスが掲載された大宮高校修猷館高校佐野高校延岡東高校の具体例から、これらのポイントを見てみよう。
 大宮高校では、(1)(2)の工夫が特徴的だ。シラバスに「学習法」の欄を設けるだけでなく、単元ごとの予復習の内容を詳細に示した「家庭学習」欄を設定している。また前記のようにバインダー形式であるため、長期休暇中等の学習計画表や模試の結果票等の、生徒が個人で活用する資料を綴じ込んでいる。
 修猷館高校では(1)(4)の工夫だ。シラバスに「予復習の仕方」「授業の受け方」「ノートの取り方」欄を設け、学習法を充実させている。また生徒が身に付けてほしい力を「押さえるべき事柄」として提示することで、生徒が学習方法や学習成果を検証できるようになっている。修猷館高校では「押さえるべき事柄」欄を設定したことで、教師側も授業1時間ごとの進め方に加え、定期考査を「学習到達度を測る指標」として捉える意識が高まったという。定期考査の度に各教科の平均点を調査し極端に点数の低い教科については、作問レベルの改善を教務部から要請するなどの取り組みも行われている。学習目標を「押さえるべき項目」として明示することで定期試験の見直しにもつながった例と言えよう。
 佐野高校は(2)〜(5)の工夫だが、その中でも(4)に特化したシラバスだ。学習法などに関わる部分を削ぎ落とし「授業を受けたら何ができるようになるのか」に徹底的にこだわったシラバスになっている。到達度目標が学校の指導方針からブレイクダウンしたものになっており、非常に分かりやすい。「地方国公立大クラスへの進学を着実に目指すことのできる学力を形成する」という佐野高校の指導方針に照らし、センター試験で7割程度の得点を確保できる学力を育成保証の目安として設定。その上で全教科が到達度目標を示しているのだ。
 学習計画表とのリンクについては、定期テスト対策シートを作成している。定期テスト一週間前にシラバスを見ながら、出題範囲を確認する時間を設け、自分のできない単元をシートに書き出させ、重点的に学習すべき単元を自覚させている。
 定期テストとのリンクに関しては、シラバスと定期テストをほぼ一対一対応させて作問し、シラバスに沿って学習すれば定期テストが解けるように設定している。作問側は、テストとなると難しい問題を解かせたいという意識になりがちだが、このようにシラバスとリンクさせることで、生徒は「シラバスに沿って学習したらテストができた」という効用感を持ち、学習への動機づけにつながるのである。
 延岡東高校は(1)〜(3)の工夫だ。学習法として、教材や教科プリントの使い方に加え、予習重視か復習重視かといった点も記述した「学習の方法と流れ」欄を設定している。また「センター試験の出題頻度」欄を設定し、単元ごとの過去10年分の出題頻度を掲載している。ダイレクトに入試と結び付けた結果、生徒のシラバス活用度は向上したという。また副次的成果として、教師側もこれまで以上に入試研究に取り組むようになり、授業でもどこに力を入れるべきかを意識するようになったという。



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