ベネッセ教育総合研究所
特集 高大連携の未来形
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2 新しい高大連携
 一方、「新しい高大連携」とは、「高大の教員が会して、生徒・学生の育成を連続的な視点から捉えた教育改善を議論する」「高校と大学の教員がお互いの教育活動に参画する」取り組みである。つまり、「高校教育と大学教育双方の改善・充実に資する双方向型の取り組み」と言えるだろう。従来型との違いは、「高校生」が主体(大学の講義参加等)ではなく、高大の「教員」が取り組みの主体となる点である。「従来型」の取り組みは、主に「進路学習」に位置付くものが多いが、高校生を主体とした取り組みは、言い換えれば、意識触発(成果)の鍵が参加する高校生に委ねられている度合いが高い。一方で、「双方向型」では、高大連携の場で得られた成果を高校教員(大学教員)自身が校内にフィードバックすることで、進路学習・教科学習・進学指導等、高校(大学)教育の改善・充実を「包括的に」促す可能性を有するものである。生徒(学生)に対する教育効果の高まりを一層期待できるだろう。
  こうした「双方向型の連携」はタイプ分けが難しいが、次のようなものが想定できる。
■授業の相互乗り入れ
 高校の教員が大学に出向いて、大学生に基礎教科の補習授業を実施する取り組み。例えば、鳥取県では、鳥取大と県教委が大学と県立高校の教員を互いに派遣し合う協定を結び、高校教員が鳥取大で英語、数学、物理、化学、生物の5教科の補習授業を実施()。また、大学教員は高校生の学習意欲の向上を狙い、高校で最新の研究成果を伝える講義を理系科目中心に実施。高校生(大学生)への授業で得られた実感を、大学・高校それぞれの指導改善に生かすという効果が期待できる。

)大学生として基礎的な知識が不十分な場合に、それを補完するための施策を「リメディアル教育」という。これは、その補習授業を高校教員が行っている事例である。
■高大の共同研究会
 高校と大学の教員が、教科の指導法や教材開発等に関する研究会を組織し、その成果を現場での実際の指導にそれぞれ生かす取り組み。特定の高校・大学間での活動の他、教科指導、生徒指導、大学入試など個別テーマごとに複数の高校と大学が横断的に研究会を組織するなどが考えられる。
  その他、高校の教員や大学の教員による、指導力の向上を目的とした研修会の開催や、相互の授業参観などの取り組み。これには、教科指導力の向上の他、教育内容についての相互理解を促進するという効果も期待できる()。

)高大連携の現状、今後の方向性の考察については勝野頼彦著『高大連携とは何か』を参考にした。


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