ベネッセ教育総合研究所
特集 高大連携の未来形
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4 具体的なアクションに向けて
■教育の連続性が鍵
 これまでの高大連携の基本型は、高校生を主体とした「従来型の連携」で占められていた。しかし、「新しい連携」の拡充は、「従来型の連携」にも影響を与えていくと考えられる。例えば、「双方向型」の取り組みで得られた成果が、校内にフィードバックされ、「従来型」の生徒の意識触発の取り組み(進路学習)の改善・充実に寄与していく。逆に、「従来型」の取り組みの成果が積み上がり、より緊密な連携が生まれる場合もあるだろう。
  これまでの高校と大学は、大学入試が唯一の接点と言われていたこともあるように、両者のつなぎ目はまさに「点」であり、相互の意思疎通や交流は限定的であった。今後、接続教育の観点から大学入試の改善が進むと共に、「新しい高大連携」が定着していけば、両者の接点が、一定の広がりを持った「面」になっていくと考えられる。社会環境の変化や「社会・企業が求める人材像」を踏まえて、高大双方の教育活動の在り方を再考する動きは、高大双方の教育課程、指導内容を「生徒・学生の連続的な育成」という視点で再構築することに結び付くだろう。こうした連携・接続教育の進展の先には、「社会に輩出する人材」を高大双方で有意に育成していくための「教育の一貫性」が生み出される可能性があるだろう(図2)。
図2
■連携の双方向化に向けて
 現在の高大連携は、大学による高校教育への協力という側面が強く、「双方向化」の動きは一部で始まったばかりである。今後は高校と大学の教員が、定期的にカリキュラムや生徒・学生の実態等について、意見交換や研究・協議を行い、相互の交流を緊密にすることが一層求められる。そのためには、現在、多くの県で設置されている連絡協議会のような会議の場を、出前講義の日程・メニューの調整等にとどめず、教育の最前線に立つ高大の教員同士が、より具体的・実質的な意見交換と協議を行う場として位置付けることが必要である(次章の群馬大と周辺高校の事例)。
  連携の「双方向化」の推進にあたっては、高大が具体的なカリキュラム開発や授業相乗りの手法を模索していく方向も考えられるのではないだろうか。例えば、物理や化学等の科目で、高校の授業・設備だけでは深めきれない実験・考察を、高大共同の教育プログラムで行っていくのである。その際は、高校主導型で近隣の大学と共同研究する形態を取ることが重要である。既に、SSHの一部の取り組みに見られる通り、「近隣大学と連携して、どのように教育力向上を図るか」というテーマについては、高校側がそのキャスティングボードを握っていくべきである。
  こうした双方向型の連携を推進していく際、高大の教員間で生徒育成のカリキュラム・シラバスを共有し、大学教員が高校の授業のどの部分にどう関与していけばよいかの見取り図を持つことも必要だろう。高大の教員が、共に教育力向上に向けた手法・コーディネートの在り方を議論すると共に、高大が具体的な教科学習の場面でもより緊密に連携していくことが必要ではないだろうか。
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 以上のような取り組みを推進していく場合、各高校の主体性と自律性の確立が前提となる。大学との連携は、高校の本来的な教育スタンスがしっかり確立していてこそ、成果を生むものである。まず、各高校の教育目標の実現を目指して、高校が生徒の教育を主体的・自律的に担うスタンスの中で、大学の教育資源の有用性を認め、大学側に積極的にアプローチしていくことが重要である。


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