ベネッセ教育総合研究所
特集 高大連携の未来形
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入試科目の変更にまで突っ込んだ第二回会議
  第一回連携会議の成果は報告書の形で県教委など関係各所に配付され、高大双方に大きなインパクトをもたらした。群馬大内部では、全学的に取り組みを拡大すべきではないかという意見が高まり、高校側でも会議の継続開催を望む声が高まっていった。その結果、04年には、群馬大が全学体制で参加する形で、第二回会議が企画されたのである。
  だが、第二回会議は、単に前回の会議の延長線上にあるわけではない。そこには新たな要素も付け加えられた。すなわち、群馬大の長年の懸案「工学部の個別学力試験への英語追加」についても議論されたのである。そのため、第一回会議で設けられた「数学」「物理」「化学」に加え、第二回会議では「英語分科会」が新たに加えられた(図3参照)。
図3
 「現在、群馬大の工学部では、個別学力試験科目に英語を課していません。しかし、論文を読むにしろ、学会発表を行うにしろコミュニケーション能力を含めた英語運用能力は必須ですから、可能であれば個別学力試験に英語を課したいと長年考えていました。仮にこの措置をとった場合、高校の進路指導や受験生にどのような影響があるのか議論したかったのです」(辻教授)
  そこで、「英語分科会」では、群馬大大学院の入試問題を手掛かりに、学部受験時に求められる英語力について検討が行われた。大学卒業時に求められる英語運用能力を明確にすることが、個別学力試験の出題レベルを明確化することにつながると考えたからである。更に、この議題は共同研究会でも引き続き議論され、他教科の教師も交えて様々な意見が交わされた。
  「私の担当は数学ですが、共同研究会では入試に英語を課すことについて、賛成の意見を述べました。高度技術者養成・研究者育成を掲げる群馬大にとっても、英語が使いこなせる人材を育成するのは必須の課題でしょう。しかし、高校教師の立場で考えた場合、英語の試験を単なる選抜のための試験にしてほしくないという思いが強いですね。『理系で必要とされる英語力とは何か』をきちんと議論した上で、資格試験的な意味合いの学力検査を課すべきだと個人的には考えています」(荒木先生)
  高校教師の多くが英語を課すことに賛成意見を述べたことは、受験生の敬遠を危惧する大学側にとって新鮮な体験となったようだ。
  一方、第二回連携会議にはもう一点、大きな発展が見られた。近隣の埼玉大、茨城大の教員にも参加を呼び掛け、取り組みの規模を更に広域的に拡大したのである。
  「隣接地域に位置することもあり、群馬大、茨城大、埼玉大には高大連携に関して共通の課題を抱えている部分が少なくありません。情報を共有できるせっかくの機会ですから、地元の高校が何を感じ、何を大学に求めているのか知っておくことが必要だと考えました。この3県は東京に近い上、県内に旧帝大などもありませんから、各大学が今後も地域における存在感を維持していくためには、相互連携を強化していかねばなりません。今回の高大連携会議は、大学間連携の端緒にもなり得る会議であったと思います」(辻教授)


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