ベネッセ教育総合研究所
大学改革の行方 大学授業改善の実相を追う
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「副専攻」制度で主体的な学びを喚起
 福井大では学部の枠を越えて幅広い教養を身に付けられるよう、それまでの「一般教育科目」を「共通教育科目」に改めると共に、「均等履修」「集中履修」「自由選択履修」という独自の履修システムを構築し、効果的な教養教育の実施体制を整えた。
  福井大の教養教育科目は、全学共通の教養科目である「A群」と学部別の専門教育科目である「B群」からなる。A・B各群はそれぞれ五つの「分野」に分かれ、更に各分野には「系」としてまとめられた科目群が置かれる(図1)。
図1 福井大の共通教育科目履修方法の概要
図1
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「均等履修」は、A群の第1〜第5の各分野から1科目ずつ、全5科目を履修させるもので、1・2年次での修得が義務付けられる。「集中履修」は、2年次前期〜3年次後期までにAまたはB群の各分野のうち、同一分野に含まれる科目を3科目以上履修させる制度。「自由選択履修」は均等履修と集中履修を合わせて20単位に満たない場合に、A・B両群から自由に履修するものだ。均等履修によって視野を広げ、集中履修で深い教養を身に付けさせるというように、段階的に教養を深めていくシステムになっているのだ。A群だけで166科目が設けられ、必修単位数は38単位に及ぶ。更に「くさび形カリキュラム」によって、1年次から専門科目を履修できるようにし、目的意識の高い学生の意欲を早期から高める工夫もしている。
  専門以外の分野の修得を促す「副専攻制度」も、福井大の特徴的な取り組みの一つだ。集中履修と自由選択履修を合わせて同一の系内の科目を5科目以上修得すると「副専攻修得認定証」が交付される。
  「様々な学問分野で異分野との融合が重視される現代においては、細分化された一つの専門分野を学ぶだけでは、社会で真に活躍できる幅広い力を身に付けることはできません。副専攻で異分野への関心を深める、あるいは専門分野を広げるなど、学習の主体性や目的意識を高めることが重要なんです」(鈴木教授)
  例年、副専攻を修得する学生は全体の約2割だが、1・2年次において副専攻を希望している学生は6割近くに達するという。現在は科目が多岐に渡り科目間の調整が取りにくく、希望者全員が副専攻を修得できるわけではないが、「将来は履修者を5〜6割まで高めていきたい」と鈴木教授は言う。
  更に、教養教育科目の再編と並行して、福井大では初年次教育の充実にも注力した。学生の学習履歴の多様化に対応するために、特に習熟度の差が大きい数学と英語に関しては、AO入試合格者に対する通信制の入学前教育や、入学直後のプレースメントテストにおいて成績不振者だった学生に対する補習授業などを設けている(補習プログラム合格者の約2割が、最終的には当該正規科目で「優」を取得する)。また、15コマ2単位の「大学教育入門セミナー」を設けて、学長自ら大学生活の在り方や大学生としての心構えを講義したり、学部の課程・学科ごとの学習法などをレクチャーしたりしている。

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