ベネッセ教育総合研究所
大学改革の行方 大学授業改善の実相を追う
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GPA制度を補完するアドバイザー制度
 学生に責任ある履修を求める以上、大学としても責任を持って履修指導を行う必要がある。GPA制度とほぼ同時に導入された「アカデミック・アドバイザー制度」は、教員が学生の成績や将来の目標などを考慮しながら、履修登録や主専攻・副専攻の選択、資格取得等に関する相談・指導を行うものだ。アドバイザー教員は一人当たり一学年約15名の学生を担当し、定期的にオフィス(研究室)を開放する。こうした「オフィスアワー」を設けて、学生は学期に最低一回は指導を受けることになっており、履修登録に際してはアドバイザーの承認が必要になる。
  「『責任ある履修には責任あるアドバイスが必要』というのがこの制度の前提です。ただ、学生の将来の志望や目指す資格取得によっては、アドバイザー以外の教員が適任の場合があります。そのため、時には相談の内容に応じて適切な指導ができる教員を紹介することもありますし、指導に不満があればアドバイザーの変更も申請できます」(高村教務部長)
  更に、桜美林大がアドバイザー制度を重視する背景には、桜美林大が「基礎学習」「専攻学習」「自由学習」を3本柱とする学習区分制度による自由度の高いカリキュラムを採用していることもある。
「基礎学習」のうち、コア科目は全学共通の必修科目群で、桜美林大の学生として最低限身に付けなくてはならない教養と、大学における学習の仕方を学ぶためのもの、「専攻学習」は各学科の専攻科目で構成されるもの、「自由学習」は特定の科目群ではなく、履修可能な単位数の範囲内で他学部・他学科の専攻科目を自由に履修できる区分である。他学部・他学科の専攻科目を「副専攻」として体系立てて履修したり、所属する学科の専攻科目を多く履修することで専門性を深めたりすることも可能だ(※7)。
※7 学生は、「基礎学習」22〜36単位、「専攻学習」40〜48単位、「自由学習」40〜58単位の範囲内(学科によって異なる)で、卒業要件の124単位を満たす。
 「科目履修の自由度の高さは、学生の学びの可能性を広げる一方で、選択を学生に委ねすぎれば単なる『つまみ食い』になりかねません。そうした無計画な履修を防ぐことも、アドバイザーの重要な役割です。また他専攻の専門科目を自由学習で学べることは、教員にとっても『この科目は教養だから』と、安易な指導に陥ることを防ぐ効果も期待できます」(高村教務部長)
  GPA制度とアカデミック・アドバイザー制度の下での学生の履修態度は概ね良好と言える(図2)。と共に、知識の幅を広げるためにも異分野の師と積極的に交流を重ねることも大切になるでしょう。
図2
学生の履修に対する姿勢も前向きな回答が多く、アドバイザーによる履修指導への満足度も高い。指導に当たる教員の側も、半数以上が学生指導に対する意識を高めている。ただ、授業の工夫に関する取り組みについては、全学的なFDが行われておらず、課題は残る。「制度改革と意識改革は車の両輪。FD活動を通して教員の一層の指導力向上を図っていきたい」と高村教務部長は述べる。
  GPA制度の運用を軌道に乗せた今、桜美林大の大学改革は、学生が主体であるという理念の下、FD活動による教員の指導力向上という新たなステージに進もうとしている。

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