ベネッセ教育総合研究所
特集 保護者と「共育」する学校づくり
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学校と保護者で育成のビジョンを共有する
―近年、高校では保護者と連携して生徒を共に育もうとする視点がより重視されるようになっていますが、実際に保護者と十分な意思疎通を図るために苦慮されている学校も多いようです。これにはどのような理由が考えられるのでしょうか。

  問題の一つは、生徒に明確な未来像、将来像を示しにくいということです。特に、進学校でもなければ荒れている学校でもない、それこそ「普通の」高校ほど難しい。かつての日本は、普通を普通のまま全うして大学に入れば、そこそこの就職先があり、そこそこに幸せになれた。しかし今は、大学を卒業しても就職できないかも知れないわけですよね。そういうところで、保護者と学校で何かをやりましょうと言っても、育成のビジョンが共有できていないのでは、保護者としても何を協力すればいいのか分からないわけです。

―まずは、学校としてビジョンを強烈にアピールすることが必要だということですね。

  はい。小・中学校と異なり、高校の場合は基本的に生徒の選択制です。高校が「うちはこうなんです」ということをまず示した後に、それに共感した生徒が、自分の自由意志で学校を選ぶことができる。その意味では学区制を採る小・中学校以上に、高校の方が学校の個性を出しやすいと思いますね。
 「そこそこの未来」がない以上、高校はこれまでのように「普通」や「そこそこ」に甘えるのではなく、すべての高校が自分たちの「顔」を見せることが必要なのではないでしょうか。

―しかし、特色づくりに苦慮している高校は多いようです。


 そうですね。学校の個性をつくる上で大切なのは継続性です。同じ先生方が何十年も勤務し続ける私立校ではつくりやすいのですが、異動の多い公立高校では、ある先生がどんなに頑張って学校改革をしても、十年もすればほとんどの先生が入れ替わってしまいます。そのような中で、学校の個性を伝統として持ち続けるのは確かに難しいと言えます。

―公立高校にとっては大きなハンディですね。


  もちろん、学校だけでそれをするのは難しい。学校という器は変わらずにあるとしても、生徒や保護者は卒業するし、先生方もいつかは異動してしまいますからね。では、変わらずにあるものは何かと言ったら、それは地域社会です。伝統は地域社会と共につくっていくという視点が重要なんです。
  そもそも、子どもを教育するには、学校と保護者の関係性と共に、地域社会という第三の柱が必要です。授業中は学校が責任を持つ、生徒が帰宅した後は保護者が面倒を見る。しかし、子どもに関する様々な問題は、その間にある「放課後」に起こるわけで、そのときに重要になるのが地域社会です。非行問題だって、地域社会がしっかりしていればある程度防げる。学校と家庭、そして地域社会がそれぞれの立場から、子どものことを考える視点が必要なわけです。


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