ベネッセ教育総合研究所
特集 保護者と「共育」する学校づくり
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教師の顔が見える情報開示が安心感を与える
―重松さんは保護者としてのお立場から、高校に対してどのような情報開示があったらいいと思いますか。

 「金八先生」待望論のようなものがずっとありますよね。でも、現実問題として、先生の中には1時間、2時間もかけて自宅から学校に通っている人もいる。自転車で通っている金八先生のように、何かあったらすぐ学校に戻れるわけじゃない。だったら、例えば学校によっては、「うちの学校では、学校から徒歩圏内に住んでいる先生が何%います」ということをアピールしてもいいんじゃないでしょうか。自校の徒歩圏内にどれだけ先生が住んでいるかっていうのは、東大に何人受かるかっていう数字よりも教育的に意味があると、僕は思いますね。もちろん、そこに意味を見いださない保護者がいれば、それはそれでいい。ただ、それくらいのアピール、情報開示は必要だと思うし、それによって、学校の意識が問われるような気もしますね。

―保護者としては、やはり安心感を求めるのでしょうね。

 更に、親の立場で言うと、進学実績とか観念的なスローガンよりも、ともかく先生方を全員紹介してほしいですね。公立高校の入学パンフレットには、異動があるからなんでしょうが、先生の写真や一人ひとりの信条、プロフィールを載せているものって、ほとんどないじゃないですか。でも、その学校に行ったら、こんなおじさんやおばさんが待っているんだよっていうことは教えてほしいですよね。学校は校名でもなければ器でもない。先生と出会う場所なんですから。

―先生と生徒が出会う場であるという「学校の原点」の部分をアピールするわけですね。


 子どもにとっては信頼できる大人が一人いればいい。僕が42年間生きてきて思うのは、人間が50人いれば、その中の一人くらいは必ず気の合う人がいるということ。高校生くらいになると、一人ひとりの子どもの価値観や性格も違います。もしかしたら、担任の先生よりも、直接教わっていないけれども話が合う先生もいるかも知れないわけですよね。たった一人いるかも知れない気の合う先生が、学年が違うという理由だけで接点が持てないのは寂しいですよね。

―保護者にとってもメリットがありそうですね。


  そうですね。「この先生は同い年で、大学も一緒なのか」というところから親しみがわいて、何かのきっかけで話ができるようになるかも知れません。あるいはPTAが保護者の情報を発信することで、学校の指導にも役立つこともあると思います。例えば、電機メーカーに就職を希望している生徒がいるとしたら、「○○君のお父さんが電機メーカーに勤めているから話を聞いてみましょう」という風に。
 人間は不思議なもので、顔を合わせて話をしていれば不信感は減るんですよね。こんなちょっとした工夫が、学校と保護者の関係を変える第一歩になるのではないでしょうか。


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