ベネッセ教育総合研究所
大学改革の行方 教員養成改革の方向性
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再編・統合劇は起こるのか
 更に、国立大の教員養成系大学・学部の再編・統合問題について触れておきたい。
  「在り方懇」報告書についてはこれまで幾度か述べてきたが、この報告書の中で教育関係者に最も衝撃を与えた提言が、実はこの問題であった。隣接する県の中にある複数の教員養成系大学・学部を統合し、教員養成担当大学とその他の大学に機能分化させる提言であったが、結局ほとんどの大学が動かず、わずかに鳥取大と島根大の教育学部の統合があったにとどまった。02年、横須賀学長率いる宮城教育大も山形大、福島大との間で南東北3大学の再編構想が持ち上がったものの、最終的には授業連携や教員養成課程の再編には至らなかった。
  開放制の下では、たとえ教員養成課程がなくても、課程認定さえ受ければ他の一般大学同様に教員養成機能を残すことはできる。現に、島根大と統合した鳥取大や、教育学部と行政社会・経済の各学部を改組した福島大にも教員養成機能自体は残っているのだ。それでも、全国的に教育学部の再編が進まない理由はどこにあったのか。
  「大学にとっては、『教員養成課程』の名の下で教員養成を行う方が、学生集めにも有利になるからでしょう。また一般の人は、地元の教育学部がなくなるとその大学では教員養成ができなくなると思ってしまうんですね」(横須賀学長)
  現時点においても、滋賀大と京都教育大、和歌山大と三重大、鳴門教育大・香川大・高知大・愛媛大の四国4大学などで教員養成課程の統合に関する協議が進められている。岩田助教授は「3、4年後には大学法人化や専門職大学院、免許更新制の見通しができるので、その頃再び再編に向けた話し合いが具体化する可能性がある」と述べる。再編・統合問題の火種はくすぶり続けているようだ。

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