ベネッセ教育総合研究所
大学改革の行方 教員養成改革の方向性
島根大教育学部副学部長
高岡信也
Takaoka Shinya
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COLUMN
教員養成系学部再編・統合の背景〜島根大・鳥取大の例
島根、鳥取両大学の教員養成系学部再編・統合実現とその背景

  「在り方懇」報告書(01年)を契機に島根大=専門学部、鳥取大=一般学部の合意形成がいち早くなされた。全国初かつ唯一の再編だが、受け入れる素地、環境が双方にあった。
  島根大は、比較的教育(教職)志向が強く、新課程設置の際にも「教育的指導者の育成」を基本理念として堅持し、教育学、心理学及び実技系(体育、音楽、美術)をベースに「生涯学習課程」を設置して教員免許も積極的に取得させてきた。言わば、新課程にありがちな「専門志向」を制御してきた経緯を持つ。一方鳥取大は、従来から専門志向が強く、教養部解体に伴う教員の受け入れで教員数が激増していた。教育地域科学部の設置時にも、神戸大学型の学部(発達科学部)を目指す構想が多数を占めたという。また、島根大には、既に人文・社会系、基礎科学系学部(法文学部・総合理工学部)が存在し、教育学部の将来構想として最も可能性の高い「教養系学部」の設置が困難であった。教員養成専門学部という選択肢しかなかったとも言える。一方鳥取大は、同様の学部が皆無で、地域の側にも設置要望があった。

地元との合意形成

  このような背景から、協議は順調に進み、両学部の機能分担についての合意のみならず、学生定員の交換(教員養成系と新課程の互換)にまで踏み込んで報道発表され、あとは中身の詰めの問題に移った。鳥取大が「一般学部の範囲で教員養成機能を維持する」方針を打ち出し、これを鳥取県教育委員会も受け入れ、地元地域の動向に神経をとがらせていた文部科学省も「在り方懇再編第一号」として様々な支援と示唆を与えた。
  島根大では、この問題を契機に、県教育委員会と教育学部との「連携推進協議会」(03年2月)を設置、県の教育界全体に対する学部の存在意義、社会的使命を明確にすると共に、現職(学校)教員の学部教員としての派遣・受け入れ、教員研修への協力、地域の教育事業への教員及び学生の派遣等の計画を提示、教員養成専門学部の再構築に積極的に協力してもらう環境を整備した。同様の構想を鳥取県教育委員会にも提示し、「山陰地域の義務教育教員養成基幹学部」として認知された。このようにして、県境を超えた協議を経て04年度に統合協議が実現し、学部改組の説明会や入試説明会の開催等、新学部発足にあたっての情報提供と「21世紀の教師を育てる学部」のアピールに努めた。その結果、05年度入試では競争率4倍以上(従来の1.5倍程度)を示し、特に山陰両県からの受験生の大幅増を実現した。

 ■この記事の参考情報・・・>>「島根大教育学部が目指す教員養成養育」(追加情報)


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