ベネッセ教育総合研究所
指導変革の軌跡 京都府立洛北高校「SSH活動」
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時間もノウハウもない中でのカリキュラム策定
 SSHの活動を始めるにあたって、洛北高校では校長、高校・中学の各教頭、中高の理科・数学教員数名の他、教務部長、事務担当職員など、教科・分掌を越えたプロジェクトチーム「RSSP(洛北スーパーサイエンスプロジェクト)」を設置。取り組みの柱として、(1)学校設定教科「洛北サイエンス」を軸とした教育課程の編成、(2)外部機関との連携を図る「高大連携事業」、(3)実験により知識と実践の統合を図るための部活動「サイエンス部」の三つを設定した。
  中でも、洛北高校にとって大きな挑戦となったのは「洛北サイエンス」の策定と実施であった。数学・理科の枠組みにとらわれず、科目間・教科間の垣根を取り払い、関連付けながら展開していく学校設定教科である。
  「元々数学と理科は関連の強い教科で、歴史的には徐々に分離して現在に至っているという背景があります。例えば、『三角関数』と『波動』は深い関係がありますし、『微分・積分』の理論には力学の背景がある。このように数学と理科の間で近接する分野を関連付けながら学ぶことで、生徒の理解も進み、学力向上にもつながるのではないかと考えました」(京崎教頭)
  もっとも、教科間の関連付けを図ることは、現行の学習指導要領の在り方に一石を投じるほどの難事業だ。しかも、SSHの指定は04年度に入ってからであり、準備の時間はほとんどない。ノウハウも時間もない中で、カリキュラム策定には試行錯誤が繰り返された。
  「ともかく時間がないので、授業とカリキュラム策定はほとんど同時並行。走りながら進めるしかない状況でした」(野村先生)
  そのため、数学・理科の各SSH担当者が、教科ごとにカリキュラムの策定をすることとした。例えば数学では、3年間の単元を洗い出し、理科の教科書を片手に関連付けを行いながら、カリキュラム案を策定。更に、そのカリキュラム案を教科会に提出し、全10名の数学科教師と共に内容の是非を検討していった。「関連付けが甘い」「模試に対応できていない」といった意見が出れば修正し、次の教科会に提出。それを何度も繰り返し、カリキュラムの概要ができたのは、教育委員会への報告書の提出期限である11月ぎりぎりだったという。


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