ベネッセ教育総合研究所
指導変革の軌跡 京都府立洛北高校「SSH活動」
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授業の定着を可能にする高大連携を目指す
 もう一つの柱である「高大連携事業」についても、教科との関連付けや実施時期の調整は重視された。
  高大連携事業の対象大学は京都大、京都工芸繊維大、京都産業大、同志社大の4大学。洛北高校の立地の良さから、連携を組む大学には事欠かないものの、高大連携事業についても本格的な準備に取りかかったのは、指定を受けた04年度4月から。まとめ役である弓削先生は、各大学に何度も赴いて取り組み趣旨の共有や講義・実験内容のすり合わせに奔走したという。
  「近年は、大学も高校との連携に積極的ですし、京都工芸繊維大には以前から出前講義をお願いしてもいましたから、連携協定自体はすぐに結ぶことができました。しかし、出前講義という形で交流があった分、SSHにおける高大連携の趣旨を理解してもらうのには、説明が必要でした」
  今回、高大連携の協力をお願いするために京都工芸繊維大を訪れた弓削先生は、大学側の担当者に洛北高校におけるSSHの趣旨や、数学と理科の関連付け、年間計画における位置付け等、以前の出前講義との違いについて説明した。
  その甲斐あって、連携をお願いした各大学は洛北高校の意図をよく汲み取り、講義内容を綿密に練り、基礎実験から最先端の内容までを用意してくれたという。レゴブロックを使って歯車やギアなどの動力伝達機構の働きを探る実験や、最先端のナノ素材であるフラーレンについての講義、生徒が自分自身を被験者としてアルコール分解酵素の有無を調べる実験、プレゼンテーション能力を育成する実習など、高校ではする機会の少ない実験や実習をさせてもらうことができた。生徒の評判は上々だったと弓削先生は述べる。
  「実験をする時の生徒たちの生き生きした表情を見ると、受験対応だけの教育で、昨今の理科離れは食い止められないと実感します。理科は知識と実験の両方が大切。本来あるべき理科教育とは何かを考えさせられましたね」
  また、講義・実験内容と共に重要なのが、それらを実施する時期、すなわち授業の年間計画における位置付けだ。例えば、大学でDNAの実験をするなら、2年生の秋に行う生物の『遺伝』の単元に合わせて実施した方が効果的である。「授業の進度に合わせて大学連携を組むことで、理論と実践の関連付けも、より効果的に行うことができる」と弓削先生は述べる。
  それと合わせて、高大連携における講義・実験の事前学習についても、なるべく授業の中に組み込んでいくようにしたという。
  「大学における講義や実験は大切ですが、やはり一番重要なのは授業の定着です。そのため、年間の授業計画を立てる際にも、講義・実験の前後にある授業が、なるべく高大連携の事前・事後指導を兼ねるように工夫しました」(野村先生)
 大学連携が目的の授業(事前・事後指導)ではなく、あくまで「授業の定着」を図るための高大連携事業であるというわけだ。
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▲高大連携事業は、近隣4大学との間で各大学2回ずつ、計8回の講座が持たれた。
05年度は企業の研究部門との連携も行われる予定だ。


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