大学改革の行方 経済・経営系学部の改革の現状
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「学問」としての理論を実社会で生かすために

 また、同学部系統においては、ある程度目的意識を持って入学してきた学生にとっても、モチベーションを維持しづらい場合が少なくないようだ。図2は、入学前と入学後のイメージギャップについて調べたものだが「講義が面白くない」「授業に手応えがない」など授業に対する欲求不満の度合いが高い。

▼図2 クリックすると拡大します。
図2

  一方、理工系や医歯薬系などは実験やレポートが多いにもかかわらず、授業に欲求不満を抱く学生は総じて少ない。これは、具体的な資格や社会の即戦力として求められる力を身に付けられるという実感があるからなのだろう。しかし、経済・経営系学部では、資格に直結した講義が少なく、また授業で学んだことを社会で生かせる実感を得にくいため、手応えが感じられない場合もあるようだ。
  特に経済学の場合は、経営学や商学に比べて学問の歴史が古く、かつ体系化されているため、講義で扱う基礎的な理論は現実社会との接点を見いだしづらいという。一橋大大学院商学研究科長の山内弘隆教授は次のように述べる。
  「特に近年、多くの大学では近代経済学が主流になってきているので、経済学が理論的になりすぎている傾向があると思います。実際の経済の動きや政策よりも、理論を突き詰めていくことが多いため、現実との乖離から学生の興味・関心を損なうこともあるのではないでしょうか」
  学問としての理論を現実社会の中でどのように生かしていくのかということが重要なわけだが、一橋大商学部ではこれを「実学の象牙の塔」と呼んで、学部改革・大学運営の指針としているという。つまり、現実的な側面を重視しながら、一方で背景にある思想や考え方、哲学を重視した教育体制を構築することを目指しているのである。例えば山内教授の担当する「ツーリズム産業論」は、運輸や旅行、ホテルなどの事業者が組織する「日本ツーリズム産業団体連合会」の寄付による産学連携の講義であるが、講義の一部に企業トップの講演や討論などを織り込んで、現実社会と理論との架橋を求めている。単なる講演にとどまらず、科目全体の位置付けの中で、授業の一部として組み込まれていることが特徴だ。
  一橋大学のみならず、経済・経営系学部において、企業のトップクラスの人材による講演や講義を組み入れている大学は少なくない。神戸大経営学部でも20年以上に渡って、大企業の社長クラスの人材が講演する「トップマネジメント講座」を実施している。両大学とも旧制高等商業学校を前身とするだけに、創立当初から高度な職業人を育成する理念がある。そうした理論と現実の架橋を重視した教育が大学満足度を上げるポイントであるようだ。


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