ベネッセ教育総合研究所
理数教育の展望
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大学の機能分化で高まるSSHへの注目
―SSHが、初等中等教育から博士課程までの連続性を持った人材育成の一つの試みである以上、大学の協力も非常に重要ですね。

有本 法人化によって、国立大といえども地域への貢献なくしては生き残りは難しいという意識が強まっています。そういう環境の変化もあって、概ねSSHに対しても熱心に協力していただいていると思うのですが、私は、次の局面としての高大連携の更なる深化を期待しています。SSHを経験した意欲的で優秀な生徒をAO入試などで積極的に選抜する大学がもっと増えていいと思います。
 今、大学は機能分化が求められており、各大学は自らの特色を考え、それに合った生徒を選抜することを迫られています。第三者機関による大学評価によって、学生をただ卒業させるだけでなく、一定の質にまで高めることが今まで以上に厳しく求められるようになります。そうなると、入り口となる入試選抜の有様も当然変わり、SSHのような学習プロフィールを持つ生徒を育てている高校への大学の注目度は必然的に高くなってくるはずです。また、SSH指定校は地域における高大連携の拠点としての役割も担っていくことになるでしょう。そして、そのような時代の動きをキャッチできない大学、地域と結び付こうとしない大学は、はっきり言って生き残れないと私は思います。

―人材育成の問題は、高校や大学だけのものではありませんよね。

有本 その通りですね。社会全体として、「日本の成人が備えておくべき科学リテラシーとは何か」をもっと議論していくべきでしょう。文部科学省が学習到達目標として示すものとは別に、学会でも議論していただき、そこでコンセンサスを得たものと学習指導要領がリンクしていくような形が望ましいのではないでしょうか。例えば産業界には、SSHや「総合的な学習の時間」などで、テーマに合った講師を企業から横断的に募集し派遣するなど、コーディネーター的な役割が期待されます。
 日本は、今や「キャッチアップ」の時代から「フロントランナー」の時代へと移行し、人材要件として独創性や創造性が重視されるようになりました。理数教育においても、裾野を大きく広げ、独創性や創造性を持った高い頂に立つ人材を育むことが求められます。そしてそのような人材育成を実現するビジョンとスキルを持った教育者の養成もこれからの重要なテーマだと思います。

―本日はどうもありがとうございました。


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