ベネッセ教育総合研究所
SSH指定校レポート
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クローズアップSSH
◎SSH指定校として、2年目の活動に入った一宮高校の取り組みは、どのように深化し、3年目を迎えようとしているのだろうか?

高校と大学の役割分担を機能的に整理する
 一宮高校のSSH事業の核は、学校設定科目「スーパーサイエンス」の特別研究(理科)だ。主に名古屋大及び名古屋工業大との連携の下、チームティーチング形式を適宜取り入れ実施される。
 「取り上げるテーマは、基本的には本校の教師が検討し、決めていきました。高校生が興味を持つテーマで、高校と大学の学びの中間に位置するようなものを探していったのです。そのため、教師自身が、現代の科学について勉強することから始まりました」(川口光正先生)
 教師たちは各大学の研究室を何度も訪ね、更に下準備を重ねていく。
 「本校にある実験器具の確認から、事前に生徒に取り組ませておくべき学習項目の検討、実際に取り組む実験の予行まで、連携がスムーズに進むようにあらゆる問題を検討しました」(森節隆先生)
 例えば、素粒子宇宙物理学の権威である名古屋大大学院理学研究科・丹羽公雄教授の研究室と連携した授業「宇宙線を捉える」(全7時間)では、まず宇宙線・放射線に関する基礎知識の講義と実験装置の使い方に関する予備知識を、一宮高校の教師が3時間分講義した。
 「実験に入ってから、教授をはじめ研究室に所属する院生が参加します。また実験は、三つの異なる内容のものを実施します。どれを選ぶかは生徒自身が自分の興味によって決めるようにしました」(川口先生)
 実験はクラス単位で、各テーマ3班構成(各班4〜5人)で行われ、一宮高校の教師と研究室のスタッフが班ごとに一人の割合で生徒の作業を細かくフォローした。
 「数名の生徒が代表で実験を行い、大勢はそれを見ているという形式ではなく、一人ひとりが主役となって、実験の緊張感や達成感を味わえるように配慮しました」(田中教頭)  学習の成果のチェック、生徒の発表へのフィードバックにも研究室の協力を仰いだ。
 「生徒が『真に理解できたかどうか』を確認するには、誰かに伝えるという、実践した内容を再構築する場面が必要です。その意味で発表させることは極めて重要なことと考えています。講師の先生からは、『見たことを大切に』というアドバイスをいただきましたが、この経験は生徒にとって大きな自信になったようです」(田中教頭)
 生徒が理解し、興味・関心を高められるよう、取り組みの目標や外枠は高校側が主導して固め、大学の指導教官と連携して実験を組み立て、発表までつなげ、その結果を高校の教師と指導教官の両者の目で評価する。これが一宮高校の高大連携のコンセプトなのだ。
図表

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