未来をつくる大学の研究室 ヒューマノイドロボット

中村仁彦

中村仁彦 教授

なかむら・よしひこ
1954年生まれ。工学博士。専門はロボティクス。
82年京都大大学院工学研究科精密機械工学専攻博士課程退学。同大助手、カリフォルニア大学サンタバーバラ校準教授等を経て、現在、東京大大学院情報理工学系研究科教授。ロボットの知能研究の第一人者。
98〜2003年、科学技術振興事業団 戦略的基礎研究推進事業「自律行動単位の力学的結合による脳型情報処理機械の開発」の研究代表者を務めた。著書に『ロボットの脳を創る 岩波講座 物理の世界』(岩波書店)等。

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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未来をつくる大学の研究室
最先端の研究を大学の先生が誌上講義!

東京大大学院情報理工学系研究科知能機械情報学/中村・山根研究室
ヒューマノイドロボット

一昔前までSFの世界の住人だったロボットが、 現実世界で活躍を始めようとしている。ロボットは、今後どのように発展していくのか。 第一線の研究者である中村仁彦教授の研究室を訪ねた。

ロボット研究って?

人類の良きパートナーとなるためのロボットを作る

1996年、本田技研工業は世界初の人間型自律二足歩行ロボット、P2を発表した。そして2000年には「ASIMO」が登場。より小型化・軽量化されたヒューマノイド(人間型)ロボットは、「人間とロボットが共存する社会」が来る日を私たちに予感させた。以降、ヒューマノイドロボット研究は進展し、ロボット研究の中でも最も活発で先端的な分野となっている。この研究の最大のテーマは、安定した二足歩行に代表されるロボット本体の正確な制御と知能の構築だ。これによって、人類の良きパートナーとしての姿が現実のものとなってくるのだ。


教授が語る

知能を持ち、人と心を通わせられるロボットが
もうすぐ誕生します

中村仁彦 教授

なぜ人間型?
ロボットが「人間型」であることは理にかなっている

 私たちの研究室「力学制御(※1)システム研究室」の研究テーマはロボティクス(※2)(ロボット工学)です。ロボティクスの定義は人によって異なりますが、この研究室では広範囲に渡る研究を行っています。基礎技術の研究では、ロボットの脳の開発やヒューマノイドロボット(※3)の運動制御の研究、応用技術の研究では、医師に代わって手術を行う外科手術ロボットの研究、コンピュータアニメーションや医療を目的とした人体モデルや人間の運動パターンの研究などです。
  なぜ、ヒューマノイドが注目を集めているかというと、まず実利的であるという理由が挙げられます。人の形をしていれば、我々の生活空間に違和感なく溶け込めます。もし、ロボットの胴回りが3メートルもあるような形、大きさだと、室内に入れるためには多くの費用をかけて建物を建て替えなければなりません。
  災害現場など危険な環境で作業しなければならないときも、ヒューマノイドが活躍できます。いつもは人間が乗っている産業車両に人型ロボットを搭乗させ、遠隔操作で代行運転させるのです。普段使っている産業車両を改造したりせずに、そのまま使用することもできるのですから、コスト的なメリットは大きいですよね。
  これまでの機械になかった特徴として、ロボットは日常生活で人とコミュニケーションして役立つようになります。コミュニケーションの面でも、ロボットには人の形が一番適しています。人間対人間のコミュニケーションでも、相手が何を考えているか分からない状況は居心地が悪いものです。ロボットが人の形をしていれば、例えば「目が合った」「腕を動かした」という身体的な動作から、ロボットの行動を予測したり、理解したりしやすくなります。

用語解説
※1 制御 機械や装置などを目的とする状態に保つために、数理モデルをつくり、どうすれば目的通り動くかを計算する力学の中の一分野。
※2 ロボティクス ロボット学、あるいはロボット工学。ロボットに関する技術を研究する学問。ロボットとは、人がする作業を人の代わりに行う装置のこと。
※3 ヒューマノイドロボット 人を模した機械のこと。
写真

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