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詳細情報
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三重県立 川越高等学校


■研究開発課題
高度な実践的コミュニケーション能力を身に付けるための英語教育における指導と評価の在り方に関する実践的研究
■主要指標
【リーディング力】
英検2級程度の英文が70%の理解で120wpmの読解ができる。
英字新聞やリーダースダイジェストなら30%くらいは理解できる。
【ライティング力】
結束性と首尾一貫性のある自由英作文1パラグラフ(100語程度)が20分程度で書き上げられる。
大学で英語のレポートを書くというようなアカデミックライティングに精神的負担があまりなく移行できる基礎力がある。
【リスニング】
国内での英語Newsなら、大まかに聞き取ることができ、ほぼ内容がわかる。
【スピーキング】
英語で自分の意見を述べたり、簡易な事柄の説明やディスカッションができる。
上級者はトピックアウトライン(話のポイントを表す単語だけでアウトラインを構成したもの)のみを見ながら、スピーチかプレゼンテーションができる。
【語彙力】
認識語彙4000語程度(Jacet 4000)があり、英検2級程度の英文はほとんど苦痛なく読める。
運用語彙は1500〜2000語程度。
■補助指標
1.ベネッセコーポレーションのGTEC for STUDENTS
  GTEC for STUDENTSのグレード    
  リーディング⇒(入学時:グレード4、卒業時:グレード6)
  リスニング ⇒(入学時:グレード3、卒業時:グレード6)
  ライティング⇒(入学時:グレード3、卒業時:グレード5)
2.英検 
  英検2級をトップレベルの成績で合格できる。
■研究内容
1.   「学んでから使う」から「使いながら学ぶ」へと指導の発想を転換した指導の在り方に関する実践的研究

2. 「全体から部分へ」の考え方に立った年間授業計画(シラバス)の作成と公表

3. 「全体から部分へ」の考え方に立った授業・評価の在り方に関する実践的研究

4. 同時通訳の訓練法を取り入れた指導法に関する実践的研究
(通訳者訓練法の言語材料定着への応用)


5. 英語によるアカデミック・ライティングのトレーニングを取り入れた指導に関する実践研究 (WS)

6. 情報機器を活用した英語によるコミュニケーション活動の指導に関する実践的研究
(コンピュータ等を活用した英語によるレポート作成やプレゼンテーションの指導)
(WS)

7. independent learnerの育成を支援する教育環境の整備に関する実践的研究

8. 学校設定科目「日本文化研究」に関する実践的研究 (WS)


2005年度以前 学校提供資料

■研究テーマ
ライティングからスピーキングへつなげる活動
■そのテーマを研究しようと考えた背景
将来、グローバルに活躍する人材を育成するためには、高等学校においてその基礎として、日常的な話題よりもう一歩進んだ社会問題等に関する題材を扱いながら、4技能を養成する必要がある、との問題意識があった。
■当初期待していた成果
リーディング:語彙の情報が十分あれば、オーセンティックなテキストを読みこなすことができる。
リスニング:比較的易しい社会問題の議論を聞いて理解し続けることができる。
ライティング:アカデミック・ライティング(論理的なパラグラフ構造や論理マーカー)の力の達成。
■対象クラス、生徒人数
英語科 各学年80名が対象
■指導教員、教員人数
日本人英語教諭11名(異動者を含むと通算は13名)、AET2名
■その他
コンピュータを活用した授業(LL教室)、異文化理解の授業を独自に編成
■指導計画
添付資料1 三重県立川越高等学校 スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール研究全体図
■一連の指導の流れ
(1)「ライティングからスピーキングへつなげる活動」

1.各年度の取組

【平成14年度】
1. ライティングの継続的な指導
趣味や将来の夢、色の好みなど身近な話題からスタートした。TOEFLのライティングの実例を示し評価させてライティングのコツを理解させた。9割以上の生徒が、ライティングにより英語の力が高まると考え、7割以上が自主的な学習に意欲を見せた。

2. パラグラフの形式・論理マーカーの指導
パラグラフの形式、論理マーカーに焦点を当てた指導を行った。ディベートで用いられるような明確に自分の意見を述べるテーマで、まず自由にライティングさせた後、パラグラフの構造や論理マーカーについて指導を行い、書き直させた。この指導によって、ライティングに対する自信は有意に上昇した。

【平成15年度】
3. ライティングからスピーキングへつなげる活動
スピーチ原稿を書かせ、原稿から選んだ20語の単語リストを参照しながらスピーチさせた。rehearsed speechからunrehearsed speechへの橋渡し的な活動と考えている。アンケートでは、8割の生徒が「力のつく活動である」と評価した。2学期には、20語のキーワードリストが役に立たないという声を聞いたので、50語に増やしたところ、「50語のキーワードは有効か?」のアンケートで35%が「はい」、41%が「ややはい」と答え、有効であることが分かった。

【平成16年度】
4. ライティングからスピーキングへつなげる活動
平成15年度のライティングからスピーキングへつなげる活動を継続し、4月下旬と11月下旬にイギリスのナショナルカリキュラムのattainment targetを利用したスピーキングテストを実施し、平均で5.00から5.59へとスピーキング力が向上した。しかし、同時に行ったスピーキングへの自信に関する調査では、変化が見られなかった。この点について、再度自由記述のアンケートを行ったところ、「機会が十分ではなかった」「テーマが難しくて話せなかった」「緊張してしまう」「失敗して自信がなくなった」などの理由が挙げられた。十分な機会と適切なテーマが今後の課題であると思われる。

2.他校への適用
ライティングに利用する言語材料をインプットすることは不可欠であるが、ひとつの科目の中では、十分な時間が見出せないかもしれない。本校では、「英語理解」でインプットした内容を基にライティングを行った。作者に手紙を書くなどの設定が有効である。
キーワードリストを作成して、手元に限られた情報を持ってのスピーキングは、rehearsedなスピーキングからunrehearsedなスピーキングへの橋渡し的な活動として有効である。

3.補足
本校の仮説は、「論理的なライティングの力がスピーキング力にも転移する」というものですが、この転移を検証することは難しいことが分かりました。そこで「ライティング(80〜120語)をさせその内容を単語リスト(20語)だけを見ながらスピーチする活動を一定期間継続して行い、その前後でスピーキング能力を測定する」という取組を行いました。上記発表を、ネイティブ・スピーカーへの1対1の対話形式としました。スピーキング能力については、イギリスのナショナルカリキュラムのattainment targetを利用し、ALTなどのネイティブ・スピーカーに判定してもらいました。スピーキング能力の判定は正確には行えないと思われますが、生徒のスピーキングのビデオを見ながら基準を統一する努力をしました。
ライティングのテーマは、生徒が学んだことを活かせるように、「英語理解」等の学習内容に基づいたものにしています。読書感想文、著者・登場人物への手紙というような設定をしています。また、修学旅行先の沖縄での平和学習についても書かせました。

  • Polestar Reading Course Lesson 5 Barrier-Free Heartsの読書感想文
    乙武 洋匡著『五体不満足』の一部。夏休みの宿題になったものをrewriteさせました。自由に書かせたものを、トピックセンテンスを書いて、100語にまとめさせました。
  • Crown English Course II Lesson 3 Crossing the Border
    日本人初の「国境なき医師団」メンバー貫戸朋子さんの経験を描いたレッスン。貫戸さんへの手紙を書かせました。本文中の一部を引用し、その部分で感じたことを100語程度で書かせました。
  • 沖縄修学旅行での平和学習の感想文(今回のスピーチの内容)
    ガマでの体験、ガイドさんの話の内容、平和祈念資料館で見たものの中から1つを選び、自分の感じたこと、考えたことを書かせました。平和学習の内容が素晴らしかったので急遽トピックに加えました。
(2)学校設定科目「日本文化研究」に関する実践的研究

1. 平成16年度の実践
平成14年度、15年度に渡って準備した内容を有効に活用するため、シラバスをより詳細なものにした。シラバスの章立ては、1.到達目標、2.教科書、3.年間学習内容、4.指導方法、5.評価法、6.他教科との連携とし、年度当初生徒に配布し、周知徹底した。

2. 学習計画の構成
実際に英語を使用する場面を5つ想定し、年間の学習計画の柱とした。

想定1 韓国の高校生に日本の若者文化を語る。
想定2 ケニアの小学生に日本紹介のメールを送る。
想定3 在日外国人に日本の生活習慣を教える。
想定4 ドイツ人観光客に日本滞在中にしか体験できないことを紹介する。
想定5 北京の「日本デー」で、「日本文化と私」と題するスピーチをする。

想定1、2、4は想像上の場面設定であり、ロール・プレイを行った。想定3では、実際に学校に在日外国人を招請し、情報提供者およびスキットの相手役として授業に参加してもらった。想定5では、スピーチの聴衆として、中国人留学生5人を招請した。

3. 授業の基本形態
ウォーム・アップ:聴取や発話をして、英語モードへ自然に移行させることを目的とする。
英語表現の仕込み作業:テキスト、巽一朗編『英語で「日本のこと」話そう』(宝島社)にある250ほどの基本例文を、通訳訓練法などを用いて自分のものにする。手持ち表現を豊かにすることが目的である。
授業内発表:学んだ表現を、即時、ペアワーク、グループワークでアウトプットを行う。クラス全体への発表等の形をとって、実際に使ってみる。
家庭学習:授業で使った表現をもとに英文を作成する。

■成果
1.研究開発成果の発信
学校内外に効率的に、本研究開発の成果を発信し、英語教育の改善に寄与する方法を模索する必要があると考え、成果を発信するWEBページのデザインの研究を人気のあるポータルサイトのデザインを参考に進めています。
http://www.mie-c.ed.jp/hkawag/selhi/

2.「定着」・「使う」を意識した活動
「使いながら学ぶ」というキーコンセプトを念頭に、コミュニカティブな文法指導、通訳者の訓練法による定着、ライティングからスピーキングにつなげる活動における「使う」場面の提供など、従来「理解」が中心であった本校の英語教育にコミュニケーション能力育成の方向を付け加えることができました。

3.「聞く」・「話す」能力育成につながる取組み
音声指導には、通訳者の訓練法の応用など、積極的に取り組みました。具体的には、シャドーイング、クイック・レスポンス、リード・アンド・ルックアップなどを多用し、特にリスニング能力を大きく伸ばすことが出来ました。音読の正確さ・流暢さが向上しても、話す力が十分とは言えませんが、発達の様子が見られます。「実技」としての英語学習を推進できたと考えています。

4.ライティング力の伸長
1年生4月から2年生7月にかけては、あまり伸びませんでしたが、2年生7月から12月にかけて、大きな伸びを示しました。ライティングに関しては、語彙や文法・構文知識の蓄積などが必要であり、この時期にその成果が表れたからではないかと分析しています。実力は努力の量に比例して伸びるのではなく階段状に伸びる(高原効果)と言われますが、今回そのことが実感できました。生徒にも高原効果について情報を与えることで、努力を継続する心理的負担を減らすことができると思われます。
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