特集 公立中高一貫校から学ぶ中高連携

工藤文三

国立教育政策研究所初等中等教育研究部長
工藤文三

くどう・ぶんぞう
1950年生まれ。公立高校の社会科教師、国立教育研究所教科教育研究部公民教育研究室長、教科教育研究部教科教育開発研究室長、教育課程研究センター基礎教育部総括研究官を経て、現職。

*本文中のプロフィールはすべて取材時(07年3月)のものです

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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【インタビュー】公立中高一貫校の現状

中高の一体化を図ることが中高一貫校の成否を分ける

1999年に制度が導入されて以降、増え続けている公立中高一貫校。
どのような経緯で設置されたのか、設置形態ごとの特徴と現状、そして課題は何か。高校の社会科教師を経て現在、国立教育政策研究所で中高一貫教育の研究を進める工藤文三・初等中等教育研究部長に話を聞いた。

高校進学者数の拡大で制度導入の議論が加速

  中高一貫校の導入については、既に1971年の中教審答申において提言されていた。同答申では、中等教育が3年ごとに分割されているため、「十分な観察と指導による適切な進路の決定にも問題がある」と指摘し、入試による選別に依拠しない中高一貫教育の試行が提案された。
 国立教育政策研究所の工藤文三・初等中等教育研究部長は、同答申について「12歳から18歳は、子どもが『自分に何ができるのか』『何に向いているのか』など、自分の適性を探り、進路を決めていく年齢に当たります。そのデリケートな時期が、中学校と高校とに分断されていることに対する問題意識が明確に示されました」と、その意義を強調する。
 76年に始まった旧文部省の研究開発学校制度の中で学校間連携の取り組みとして具体化、85年の臨教審答申で中等教育の構造を柔軟にするため、6年制中等教育学校が提言された。そして、97年の中教審答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」において中高一貫教育制度の選択的導入が改めて提言され、99年に中高一貫校が制度化された。
 「最初の答申が出されたころは高校の増設期に当たっていたことから、制度導入には至りませんでした。高校の新設が一巡し、高校進学率も9割を超えたことで、導入に向けた議論が加速したと思います」と工藤部長は分析する。文部科学省の集計では、06年度現在、全国に197校(うち公立は132校)が設置されており(図1)、07年度以降も41校が設置される予定だ。

図1
出典/文部科学省「各都道府県等における中高一貫教育校の設置・検討状況について」

  設置形態は、設置者や入学者の決定方法、教育課程の基準などにより、3類型に分けられる(図2)。

図2

(1)中学校・高校が一つの学校として一体化した中等教育学校 
(2)高校での追加入学が認められている併設型 
(3)設置者が異なる中学校と高校をつないだ連携型
 「連携型では簡便な入試ができ、実態として中学校から高校へほとんどの生徒が進学しています。3タイプとも、高校入試に分断されずに学習や部活動にじっくり時間を割くことができる意義は大きいと思います」


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