特集 「多様化」する保護者にどう対応するか
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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「子どもに任せる」は保護者の無関心の証

 学校の積極的なアプローチが功を奏し、地区PTAには毎回7〜8割の保護者が出席する。保護者の満足度も高く、事後アンケートでは「このような話が聞けるのだったら、また出席したい」といった前向きな感想が多く寄せられている。
 そこで、07年度は、地区PTAを「国公立大志望」「私立大志望」に分けて、生徒の志望に応じた進路講演会として実施する計画だ。対象は2、3年生の保護者を中心とする。町田先生は「対象を絞り込むことで、プレゼンもしやすくなる上、出席率も向上するのではないか」と期待する。
 ただ、出席率の向上はあくまで手段であり、大切なのは進路講演会を通じて保護者が学校に関心を持つことだ。その点では、乗り越えなければならない壁がある。
 近年、学校に厳しい意見を寄せる保護者が増えていることは、よく指摘されることだ。同校でも同様の傾向にある。しかし、そうした意見は教育への関心の高さの裏返しであり、保護者からアプローチしてくるため、かえってコミュニケーションが取りやすいという。問題なのは、「子どもに対して無関心な保護者が増えていること」と、町田先生は指摘する。
 「保護者は『子どもに任せています』とよく口にします。一見、生徒は自由に選択でき、教師もスムーズに進路指導ができるように思えますが、実は単なる無関心である場合が多い。そうした保護者は進路講演会にも来ません。志望校を決める段階になって、初めて学費や成績の問題に気づき、慌てて学校に相談に来る場合も少なくありません。早くから進路に関心を持ち、積極的に学校とかかわることが、生徒のより良い進路選択につながると考えています」
 地区PTAの開催で日程・時間帯の問題を解消し、提供する情報の充実で保護者の満足度を高めている同校だが、無関心な保護者に対しては、打開策を模索している状況だ。
 ここ2年間、町田先生は入学式で必ず次のメッセージを保護者に伝えている。「進路について、子どもと学校に任せているという意識は持たないでください。そして、できるだけ学校に足を運んでください」。保護者が教師と足並みをそろえることで、進路指導が変わる。そうした思いがメッセージには込められている。


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